研究室は校舎の3階にあるのに、猫が廊下を走っている姿が見え、声をかけたら逃げてしまいました。なんだか現実のことのようには思えず、そのままにしておいたのですが、しばらくして部屋に入ってきた学生が「さっき猫がいたんですよ」って教えてくれたので、ようやくこの建物の中を猫が徘徊している事実を飲みこんだのでした。
そうなったら、もっと仲良くしたいじゃないですか。さっそく廊下に猫を探しにいくと、意外にも部屋から10歩くらいの場所でうずくまっていました。なんという出会い。こうなったらもう仕方ない、と部屋に連れ込んでしまいました。
しかし相手は野良猫。全然仲良くしてくれません。本棚の本と本の間にすわってじっとしています。私も興奮して、なりふり構わず部屋に入れたはいいけれど、このまま閉じ込めておいてもトイレなどできないし、いつか学生や先生に見つかるだろうしで、早くも困ってしまいました。そう、私たち、初めから上手くいくはずなかったのです。
とはいえ、このまま何のもてなしもせずに部屋から追い出すのも忍びないと思い、コンビニで餌を買い、食べさせてから外に出しました。餌を食べた後は、なんとなくこちらに好意的な眼差しを向けていた野良猫は、なぜ急に追い出されるのか分からないといった様子で、廊下に出された後も何度も後ろを振り返り、ゆっくり去ってゆきました。
野良猫がいなくなった後も、白昼夢を見た気分でしばらくぼんやりため息ばかりついていました。短い時間でしたが夢のように楽しい時間でした。またあの子がいつこの部屋に立ち寄ってきてもいいように、猫缶を1つロッカーに入れておこうと思っています。
