晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜 -2ページ目

晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

晴れた日は山に登り街を走り、 雨の日は好きな音楽を聞きながら本を読む
そんな暮らしがいい!

久しぶりに、女性で時代小説の名手朝井まかてさんの小説を続けて2作読んでみました。

 

すかたん

江戸時代の青物問屋を舞台にした物語。「すかたん」とは、関西弁で「間抜けな人」を揶揄していう言葉です。

 

江戸詰藩士の夫と結婚して、藩主の大坂赴任に伴って大坂に暮らし始めた主人公の知里は、夫が病で亡くなったあと、ひょんなことから天満の青物市場の頭取を務める大店「河内屋」の若旦那・清太郎に引っ張られ、上女中(女主人のサポート役)として働き始めます。

 

この清太郎が変わり者で、周りの人には好かれているが、遊び人でたびたび問題行動を起こす「すかたん」だったのです。しかし、青物(野菜)に対する情熱は人一倍大きく、知里や周りを巻き込んで旧態依然とした青物市場を変えていこうと動きます。知里はそんな清太郎に次第に惹かれ始め.....。

 

知里と清太郎の恋の行方もさることながら、悪徳商人とのやり取りや野菜にまつわる蘊蓄など、面白く読めましたが、次作の「ぬけまいる」と比べると完成度はイマイチでした。作者のこれが3作目ということですが、登場人物の背景などもう少し掘り下げてほしかったところです。

 

江戸時代の話ですが、問屋(仲買)と生産者である農家との間で直売をめぐる軋轢などは、今の農業にも通じる問題ですね。当時のなにわ言葉の小気味良い言い回しが、関西人には親しみが湧いて読みやすかった。

 

時代小説に馴染みのない人にも楽しく読める一冊です。

 

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ぬけまいる

 

主人公は、江戸に住む幼馴染みで20代後半になった女性3人。10代の頃は。近所の不良と張り合って「猪鹿蝶」と呼ばれたトリオ。

 

お以乃(いの).....目指すものもなく、家業の一膳飯屋を手伝う普通の女になり、”自分さがし”をしているアラサー

お志花(しか).....御家人に嫁いだが、何か鬱積をかかえている専業主婦

お蝶(ちょう).....傾きかけていた家業の小間物屋を大店に育て上げた実業家だが、若い役者(ホスト)に入れ上げた挙句、若い女に奪われてしまう

 

三人三様今の時代に通じる悩みを抱えた等身大のキャラの3人が、家も家庭も放り出し伊勢神宮へ抜け詣り(ぬけまいり)*に行くことになり、その途中の東海道で起こる様々な出来事を3人の長所と知恵で乗り越えていくストーリーです。

(*抜け詣りー家族や周囲の人に知らせずに、突発的に伊勢詣りに出かけること)

 

ストーリーも面白いですが、作者の入念な下調べのおかげで、東海道の名物や、通行手形の書式、大井川の通行料金の仕組みなどが紹介されていて、当時の旅行事情がよく分かります。

 

旅の途中で騙されて無一文になった3人が、そこからどうやって旅費を稼ぎ、どうやって騙された相手に仕返しをするか。ほろりとさせるエピソードを挟みつつ、博才のあるお以乃、商売の得意なお蝶、武芸に秀でたお志花が、それぞれの特技を生かしてトラブルを解決していく様子は、読んでいて本当に面白かったです。

 

花札を知っている人ならわかる通り、3人の名前や作中での博打(こいこい、おいちょかぶなど)が重要なアクセントになっています。

 

当時はまだ男尊女卑の世の中でしたが、そんな風潮を知恵とユーモアで克服していく3人の道中は痛快ですね。男女平等と言いつつ、なかなか変わらない今の世の中にイラついている女性には特に刺さると思います。

 

(これドラマにしたら面白いのに、と思っていたら2018年にNHKでドラマ化されていました。)

 

この後に書いた「恋歌」が直木賞を受賞する訳ですが、この作品あたりから、サスペンスやどんでん返しを含んだプロットの組み立て方が上手くなったと思った一冊です。