高田郁(かおる)さんの時代小説「あきない世傳 金と銀」全13巻と特別編2巻を読み終わりました
高田さんの時代小説といえば、大坂に生まれて江戸に下った女料理人の苦労を描いたベストセラー「みをつくし料理帖」シリーズが有名ですね。黒木華さんが主演してNHKの連続ドラマにもなり、映画化もされた作品です。
その「みをつくし...」と同じような設定で、江戸時代の大坂の呉服商に奉公に出た娘が商才を発揮して、江戸の大店の店主になる過程を描いた物語が「あきない...」です。
区別するつもりはありませんが、男性作家の書いた剣豪物や人情物の時代小説とは違って、高田さんの書く時代小説は、細やかな感情描写が特徴です。
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全13巻のあらすじをざっくりと紹介すると
摂津の学者の子として生まれた主人公「幸」は、家族と別れて九歳で大坂天満の呉服商「五十鈴屋」へ奉公に出ます。下働きの女衆でありながら、番頭の治兵衛に商才を見出されて少しずつ商いに携わることに。
持ち前の知恵と才覚を生かし、ついに五十鈴屋の四代目の女房、いわゆる「ご寮さん」になりますが、十七歳で寡婦になってしまいます。弟が五代目を継ぎ、幸は彼と再婚しますが、彼女の商才を妬んで家出をしてしまいます。
その弟六代目に三度嫁ぐことになった幸は、商売を広げるために江戸に進出しようと画策します。しかし物の考え方も、着物の好みも大坂とはまるで違う江戸では戸惑うことばかり。
そんな中でも、少しずつ知恵を出して店を大きくしていく幸に、様々な試練が襲います。火事に遭ったり、商売仲間から外されたり、仲間から裏切られたり。絶望感に苛まれながらも、縁で繋がった人たちの力も借りながら、自ら七代目となった幸と奉公人たは、最大の危機を最大の好機にすべく、様々な知恵を絞りだして乗り切り、次第に大店になっていきます。
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ジェットコースターのような波乱万丈の幸の生き様を、二十四節気をはじめとする年中行事を絡めながら、街の風景に人々の感情を重ね合わせて描く文章は、読んでいてとても心地よいものでした。
各巻に必ずと言って良いほど、ほろりとさせられる場面があり、毎回「上手いなぁ!」と感心させられました。特に最終13巻の最後の場面などは、涙が止まりませんでした。
「商道を究めることを縦糸に、折々の人間模様を緯糸に、織りなされていく江戸時代中期の商家の物語」という紹介文がまさに簡潔に的を得ていますね。
「買うての幸い、売っての幸せ」をモットーに、ただ自分たちが儲けることだけではなく、顧客が幸せになるような商売をすることがいかに大切か、これは今でも通用する心構えですね。
(それを忘れた商売人の何と多いことか...)
当時の資料をしっかり読み込んだことがわかる描写、例えば商習慣やしきたりが簡潔な文章でよくわかるように書かれています。特に感心したのは、呉服商ということで、絹や木綿の織り方や生地の色使いの紹介がとても細かく面白かったことです。
〇〇色の生地に△△色の帯を合わせるという表現が出るたびにググり、今更ながら日本古来の色の表現に感心することしきりでした。千歳緑?竜胆色?青藤?香色?桑の実色って?などと知らない表現ばかり💦。
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そしてとうとう一昨年末から、NHKでドラマ化されましたね。主人公の幸を演じたのは小芝風花ちゃん。私は小説が原作のドラマはほとんど観ないので、これも観ず仕舞いでしたが、なかなか評判が良かったようです。
今春からシーズン2が始まるのに合わせて、番宣がてら年初から再放送されているのをちょっと観てみました。NHKらしい丁寧なドラマ作りで、衣装も高価な生地の和服を惜しげもなく使っていて、綺麗な映像に映えます。
風花ちゃんの和服姿の佇まいが美しい。久しぶりに見た日本髪が似合う女優さんですね。
(余談ですが、今年のNHK大河ドラマ「べらぼう」で、花魁役を演じた風花ちゃんがSNSで絶賛されていますね。これも写真しか見ていませんが、普段CMやバラエティなどで見せる表情と違った魅力があります。)
風花ちゃんももちろんですが、脇役の俳優さんもセリフから所作に至るまで違和感のない演技で、面白かったです。「みをつくし...」の時もそうでしたが、時代劇の放映が少なくなった今では、数少ない良質な番組です。
本を読んだ時に自分で思い描いていた人物像と違う配役もありましたが、そこは許容範囲だったので、しばらく観続けてみようと思っています。
