佐藤雅彦という名前は知らなくても
「スコーン、スコーン、コイケヤスコーン、.....」とか
「ドンタコスったら、ドンタコス、.....」
「♪〜ポリンキー、ポリンキー、三角形のひみつはね、.....〜♪」
などのCMは観たり聞いたりしたことがあると思います。
そして、大ヒットした「だんご3兄弟」の原案や
NHK Eテレの「ピタゴラスイッチ」のコンセプトなど
これらは全て佐藤雅彦さんが考案したものです。
この本は、もともと今年横浜で開催された「佐藤雅彦展」の公式図録として作られたもので、佐藤さん自身が「(自分の作品の)作り方を作る(解説する)」という内容です。
併せて、彼の大学生時代から現在に至るまでの軌跡と、「(今までにない新しい)作り方(で作品)を作る」方法を編み出したいきさつが書かれています。
東京大学理科一類に進学した佐藤さんは、途中で教育学に目覚めて転籍したものの、自分の考えた教育方法が当時はあまりにも突発で理解されなかった*ため、教師ではなくサラリーマンとして電通に就職します。
(*この当時の考えが、後年になって彼のアイデアや経歴の元となります)
電通のセールスプロモーション局に配属された佐藤さんは、雑誌や新聞、ポスターなどのグラフィックデザインを手掛けて、それが一部の専門家の間で評判になっていきます。
希望して、CMなどの広告を主に手掛けるクリエイティブ局に異動になり、朝日広告賞を受賞して一躍名前が知られるようになります。
この頃から彼が手がけるCMに、新しい作り方の「ルール」が生まれます。
それは「音は映像を規定する」ということ。簡単に言えば、音から作るということです。彼の作ったCM、例えばコイケヤの「スコーン」などは、まず音ありきで作られていて今でも印象に残っていますね。
また、広告には「トーン」(=世界観)が必要だというのも、彼が考えた方法論です。広告の「トーン」とは、商品の風格・品格・佇まいという「見えない衣」をまとわせることだそうです。
当時流行っていた「広告は文化だ」とか「広告は芸術だ」という業界の考えに疑問だった彼は、電通を退社し、個人の企画事務所を立ち上げます。
その後、SONYのプレイステーションのゲームソフト「I.Q」や、大ヒットした「だんご3兄弟」など、今までの広告媒体という枠には収まらない企画が生まれていきます。
1999年、彼は慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスにある環境情報学部の教授として迎えられます。東大時代に一度挫折した教育現場にようやく立つことになります。
そこで立ち上げた、「佐藤研」という研究会(ゼミ)の卒業生から、その後マスコミや広告業界で活躍するメンバーが生まれていきます。
「佐藤研」の特徴は、一言で言えば「アルゴリズムの表現」ということになるそうです。この辺りから、文系の私にはついていけなくなりました。
(ここから生まれた、私の大好きなTV番組「ピタゴラスイッチ」では、「アルゴリズム体操」なんていうのもありましたね)
そして、2006年には慶応大学の教授を務めつつ、掛け持ちで東京藝術大学大学院映像研究科の教授に就任します。最新技術の設備がある東京藝大では、映像表現に軸足を移して、さまざまな受賞作品を生み出していきます。そして、2014年にはその作品がカンヌ映画祭で上演されるという快挙をなし遂げたのです。
彼の年譜と、これまで生み出された作品を見直してみると、まさに「天才」としか言いようのない人ですね。話題になったTVCMひとつとっても、同じパターンではなく、常に人の想像の先をゆく作り手だったことが分かります。
彼の作品は古いものでもYouTubeで見られるようなので、この本でその制作背景を知ってから懐かしいCMなどを見るのが面白かったです。
