前から行きたいと思っていた、島根県にある「足立美術館」に行ってきました。
7月14日金曜日
朝7:35 新大阪駅から新幹線で岡山駅まで。岡山駅からは特急「やくも」*に乗り継いで、伯備線・山陽本線を通り、最寄駅になる安来(やすぎ)駅に着いたのは、11:25でした。やっぱり遠いですね。
*特急「やくも」は、横揺れがきついことで有名な振り子式の381系の車両です。乗り物酔いする人が多いため、あちこちの路線で次第に使われなくなり、この「やくも」も来年春から順次新型車両に変わるそうなので、貴重な体験になりました。
安来駅前には、ご当地の安来節のキャラクター「あらエッサくん」などの石像がありました。島根出身の水木しげるのデザインかなと思ったら、市の職員が描いたイラストから生まれたキャラクターだそうです。
安来駅から美術館までは、直行バスに乗リ20分ほどで到着。駐車場から見える白い建物は、2010年にできた美術館新館でした。
入館する前に、本館のすぐ横にある旅館「竹葉」の食事処でランチ。
動物由来の食材を使わないマクロビ(マクロビオテック)のプレートランチをいただきました。味はまあまあですが、男性にはちょっと物足りない感じですね。
美術館に入ります。玄関の横には歓迎の庭と名付けられた庭園が作られています。
館内に入ると、最初に目につくのが、この黒い枠で仕切られた大きな窓。「額縁庭園」と言われているように、この窓を通して庭を見ると、一幅の絵にように見える仕掛けです。
杉苔と白砂できれいに整備された京風の苔庭も
額縁を通してみると、こんな感じ。紅葉の時期には、もっと鮮やになるでしょう。
先に進むと、この足立美術館を創設した地元出身の実業家足立全康が、庭を指差している銅像があります。彼は不動産事業などで蓄えた財産を、横山大観をはじめとする日本画家の作品収集に充てて、故郷への恩返しのために財団法人を設立したそうです。(現在の館長は彼のお孫さんです)
その横には「庭園日本一」と書かれた石碑が。美術館ですが、周りを囲む50,000坪の広さがある日本庭園は、アメリカの日本庭園専門誌"The Journal of Japanese Gardening"で、2003年から20年連続で日本一に選ばれていて、海外の人にも人気があるとか。(ちなみに2位は桂離宮です)
その先にあるのが、メインとなる枯山水庭。ロビーから大きな窓を通して、雄大な景色を見ることができます。
遠景、中景、近景という枯山水の基本を踏まえながら、現代風に設計された庭園は、ずっと見ていられますね。
この日はあいにく小雨が降る天気でしたが、雨に濡れた岩の黒さと白砂、そして木々の緑との対比がかえって際立って、なかなか味のある景色になりました。
別の場所では、黒い窓枠が額縁になって、木々のバランスや芝生の稜線などが綺麗に収まって見え、まるで琳派の絵画をみているような、まさに「生の額絵」になっています。この辺りのアングルは本当によく考えられています。
壁には、四季折々のこの景色を写したポスターが架けられていて、この美術館のアピールポイントというのがよくわかります。
庭の奥にある亀鶴山(きかくさん)には、後になって人工的に作られた高さ15mの亀鶴の滝が流れ落ちています。(写真の右奥)
さらに奥へ。坪庭を過ぎると
池庭と呼ばれる庭園に出ます。一番最初に作られた庭園だそうで、奥の茶室と横にある近代的な喫茶室との対比がよく考えられています。
池には大きな鯉が泳いでいました。
その横の建物には、仏壇のある仏間がしつらえてあり、床の間の壁がくり抜かれて、滝が流れる景色が山水画のように見える「生の掛軸」という、粋な仕掛けが。
その横の部屋には、これも外の景色を生かした「生の衝立」がありました。
海鼠壁を抜けた先には
茶室があり、抹茶がいただけます。(今回は立ち寄らずじまい)
そしてその横には、横山大観の名画「白砂青松」をイメージして造られた、大きく開放的な庭が広がっています。ここは窓もなくて雄大な景色の空気感を肌で感じることができます。
枯山水の庭もそうですが、これだけの広大な庭を一年365日維持するための、裏方の庭師さんたちの苦労が偲ばれますね。
(以前TV番組で紹介されていましたが、美術館は年中無休なので、観覧者のいない時間帯にメンテナンス作業をしているそうです)
ひと通り庭を鑑賞した後は2階に上がり、この美術館の中核をなす日本画のコレクションを見て回りました。絵画などの撮影は禁止されているので写真はありません。
120点に及ぶ横山大観の日本画コレクションのうち、常時20点ほどが展示されているそうです。若い頃から晩年に至るまでの作品があり、どれも一級品で、よくこれだけ収集できたなと思います。
大観の他にも、竹内栖鳳、橋本関雪、川合玉堂、川端龍子、上村松園、鏑木清方、前田青邨、伊東深水など、近代日本画の錚々たる大家の作品が展示されていて、ヘタな都会の美術館のコレクションを凌ぐ内容で圧倒されました。
美術館には北大路魯山人のコレクションも500点以上あり、2020年には魯山人の作品だけを展示する「魯山人館」がオープン。陶芸作品が中心ですが、これも鑑定に出したらすごい値段がつくものばかりでした。
他にも童画や木彫などのコレクションも多数あり、どれだけ財力があったのか想像もつきません。
2時間ほど歩き回って疲れたので、館内にいくつかある喫茶室のうち、枯山水の庭が見える部屋でひと休み。
コーヒーブレークの後は、地下通路で繋がっている新館へ。こちらはうって変わって、現代日本画作家の作品が展示されています。今の時代に活躍している画家の作品の傾向とかもわかって、これはこれで楽しめました。
3時間以上かけてゆっくり鑑賞した後は、併設の土産物屋さんで色々買い込み、安来駅まで戻ります。
私が安来を訪れるのは、10年以上前に取引先の工場へ出張営業で訪れた時以来です。安来は昔からの鋼(ハガネ)の町なので、駅にも鋼で造られた日本刀などが展示されていました。
17:16 大阪に向けて出発。途中で見えた大山の勇姿は雲がかかってちょっと残念。
大阪に帰ってきたのは21:18で、流石に疲れました。日帰り弾丸での足立美術館ツアーでしたが、思っていた以上の内容で大満足です。深緑の夏もいいですが、今度は紅葉の秋にでも来てみたいですね。雪の積もった冬の庭も、墨絵のようで良いかもしれません。