TVで放送されたプロモーションビデオを観て、「面白そう!」と早速映画館へ。
あらすじ(映画.comより)
一流レストランでスーシェフを務める女性カティは、シェフと大ゲンカして店を飛び出してしまう。やっとのことで見つけた新しい職場は移民の少年たちが暮らす自立支援施設で、まともな食材も器材もない。施設長ロレンゾは不満を訴えるカティに、少年たちを調理アシスタントにしようと提案。料理がつないだ絆は少年たちの未来のみならず、天涯孤独で人づきあいが苦手だったカティの人生にも変化をもたらしていく。
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タイトルにつられて美味しいフランス料理が出てくる映画だと思って観に行くと、とんでも無いことになります。もちろんフランス料理も出てきますが、それはあくまで付け合わせみたいなもので、この映画で取り上げられているのは移民問題です。
日本とは比べものにならないほど(主にアフリカなど旧植民地からの)移民を受け入れているフランスですが、それも無制限に受け入れているのではなく、厳しい条件があります。それは18歳になるまでに就業しないと不法滞在になり強制送還されるということ。
そんなフランスの抱えるデリケートで一筋縄では行かない複雑な問題を、ユーモアとエスプリと人間愛で描き出した社会派作品です。
日本でこういうテーマを扱った映画を作ると、とかく真面目な内容になってしまいますが、そこはフランス映画らしく、時におしゃれで、時にクスクスされられ、時にハートウォーミングな場面もあり、それでも伝えたいことはしっかりと伝えるというストーリーになっています。
カティ役のオドレイ・ラミーや、施設長のロレンゾ役のフランソワ・クリュゼの演技はもちろん良かったですが、この映画で注目すべきは移民役になった少年たちでしょう。彼らは実際の移民たちで、300人を超えるオーディションの末に選ばれたそうです。台本は渡さずにアウトラインを伝えただけで、彼らの自然な演技に任せたそうですが、不安と期待の混じった何とも言えない表情が良かったですね。
100分に満たない上映時間の中で、コンパクトにまとめられて場面展開も早いので、途中で中弛みすることなく観ることができます。ただ、もう少し時間をかけて主人公カティや移民の少年たちの背景を描きだしても良かったのでは、と感じました。
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映画の原題の ”La Brigade" (ブリガッド)というのは、直訳すると軍隊でいう「旅団」の意味になるそうですが、この場合は、レストランの厨房で働くチームの意味合いで使われています。
軍隊では上官の命令は絶対で、何を命令されても " Yes,sir!” と応えて行動しないとダメなように、厨房でもシェフの指示には "Oui,chef!”と応えて動かないとダメなようですね。
この映画では、カティがシェフの命令に逆らって味付けを変えてしまう場面が初めの方にありますが、まさに "Oui,chef!”の逆説的な展開になっているのが、面白い。
そしてそれが映画の後半になって、カティの指示のもとで、移民少年たちがそれぞれの役割と責任を自覚して料理を作る場面につながるわけで、この辺りのさりげない設定がいいですね。
久しぶりに見たフランス映画でした。フランス映画=おしゃれではなく、こういう映画を撮る監督もいるのかと再認識した次第。