「楽器の科学」 | 晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

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「楽器」を「科学」するって、面白そう!と思って、読んでみました。

 

 

ブルーバックスといえば、理系の記事が多いイメージがありますが、こういった文系に関連したシリーズもあります。

 

著者はフランス生まれで日本在住のマリンバソリスト・作曲家です。

 

楽器は英語だと ”instrument" となり、道具などの意味にもなりますが、著者は前書きで、日本語の「楽器」、つまり「楽しむ器」と言うニュアンスの方がしっくりくると言っています。

 

作曲は数学で理論と法則が存在すると主張する著者は、楽器も音響科学の理論と技術で支えられているといいます。そして「器具」としての楽器を、その構造だけでなく、目に見えない「音色の秘密」も科学的に説明してくれます。

 

最初に書かれているのは、楽器の分類から。といっても、よく言われる弦楽器、管楽器、打楽器、鍵盤楽器という分け方ではありません。

 

国際的にも認められている分類法で、「楽器が音を出す原理」に基づいて、5つに分けられるそうです。

 

体鳴楽器・・木琴・マリンバ・木製太鼓・銅鑼・カスタネット・鈴・マラカス・シンバルなど

膜鳴楽器・・タンバリン・ジャンベ・カズーなど

弦鳴楽器・・ギター・琴・三味線・ハープ・ピアノ・ヴァイオリン・二胡など

気鳴楽器・・トランペット・フルート・クラリネット・ハーモニカ・笙、そして「人の声」など

電鳴楽器・・テルミン・ハモンドオルガン・シンセサイザー・エレキギターなど

 

次に、楽器の個性を決める「倍音」と「共鳴」について、具体的な例を上げて説明があります。

 

「倍音」についていえば、違う楽器で同じ440Hz の A(ラ)の基音を出しても聞き分けられるのは、楽器の出す「倍音」の数が違うから。例えばフルートの倍音は十数個なのに対して、クラリネットは三十数個もあるそうです。よく聞く言葉であったも、イマイチ仕組みがよくわかっていなかった「倍音」のことがよく分かりました。

 

「共鳴」というのは、物体(楽器)が一番振動しやすい周波数で鳴ることを指します。その説明のために、ヴァイオリンやピアノ、管楽器や打楽器がどういう仕組みで鳴るのか、かなり細かく解説しています。

 

そして、楽器の性能を一番引き出せる空間として、コンサートホールの構造まで話が広がります。ホールの残響時間の話から、ホールの形(シューボックス型やヴィンヤード型の違い)がどう影響するかまで、音響科学の数式(!)まで取り上げて、詳しく説明されます。これはかなり興味深かった。

 

最後は、本書に関わる内容について、世界の一流プレーヤーに質問した回答が並んでいます。

・あなたにとって「最高の楽器」とは?

・あなたと楽器との『パートナーシップ」について

・今まで演奏してきたホールで、最高の(最悪の)体験は?

 

これが結構面白いです。楽器の演奏家だけでなく、人の声も楽器という観点から声楽のソリストまでアンケートをとっています。

 

科学というと、私のような文系の人間には難しく聞こえますが、そういう人にもわかりやすく興味を惹く形で書かれているのが良かったですね。楽器を演奏する人や演奏を聴くのが好きな人ばかりでなく、音楽全般が好きな人にもオススメの本です。