”スキン・コレクター” | 晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

晴れた日は山に登り街を走り、 雨の日は好きな音楽を聞きながら本を読む
そんな暮らしがいい!

日本でもこの10〜15年ほど前から、犯罪捜査での鑑識官や検屍官の役割がクローズアップされるようになり、ドラマでも華やかな刑事ではなく、今までだったら見向きもされなかった裏方の仕事に携わる人が主役になったりしていますね。

 

鑑識官や検屍官に対する意識の変化に影響を与えたと思われる、海外の犯罪サスペンス小説があります。

 

ひとつは、女性検視官ケイ・スカーペッタを主人公にしたパトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズ。

 

そしてもうひとつは、今回取り上げるジェフリー・ディーヴァーによる、鑑識に基づいた科学捜査を得意とするリンカーン・ライム シリーズです。

 

このシリーズの最大の特徴は、捜査中の事故で寝たきりになった主人公のリンカーン・ライムが、自宅で車椅子に座ったまま事件の推理をして捜査の指揮を取るというもの。いわば究極の車椅子探偵みたいなものです。彼に代わって現場で鑑識捜査をするのが、かつて協力して事件を解決したのが縁で、私生活でもパートナーとなったニューヨーク市警の女性刑事アメリア・サックス。

 

それ以外にも、ニューヨーク市警の一級刑事や鑑識技術者、FBI捜査官などが協力して、チーム・ライムとして凶悪犯罪の捜査に当たります。

 

今回の犯人は、一般市民を地下室で襲い、墨の代わりに毒を入れた刺青(タトゥー)を体に施すというサイコパス犯罪者。まさに人間の皮膚に異常な関心を持つ「スキン・コレクター」です。

 

(最近映画化されたスキンコレクターは、全く別の作品です)

 

 

発売後すぐにベストセラーになり、一躍ディーヴァーの名前を世に知らしめたシリーズ第1作の「ボーン・コレクター」という作品(これは後に映画化もされました)がありますが、今回はそのタイトルからわかるように、それを意識した作品になっています。

 

「ボーン・コレクター」事件を鮮やかに解決したライムに挑戦するように、犯人は物語冒頭から捜査の裏をかくような連続殺人を行います。そして現場の遺体にはタトゥーで彫られたメッセージが。それらが意味するものは何なのか?

 the second

forty

17th

the six hundredth

 

犯罪現場に残されたわずかな証拠から、ライムは犯人の意図を読み、連続犯罪を未然に防ぎ、事件解決かと思われたのですが.....。

 

単なる個人的な動機で犯罪を起こしたと思われた犯人には意外な協力者たちがいて、その者たちもライムの的確な推理で逮捕されますが、事件はそれで終わりません。

 

ライムの身近にいた意外な真犯人、そして彼らを操っていた本当の黒幕が,,,,,。

 

いつもの作品以上にストーリーが二転三転するどんでん返しの連続。そして、物語前半に散りばめられた伏線の数々が、見事にバズルのピースの如くきちっと当てはまっていく様は、流石でした。

 

物語は、「ボーン・コレクター」を忍ばせるだけでなく、ライムの最強の宿敵で亡くなった「ウォッチ・メーカー」を忍ばせる場面もあり、シリーズを読み尽くした私のようなディーヴァーファンには堪りません。

 

個人的にはリンカーン・ライムシリーズの最高傑作と思っています。興味があって読んでみようという人は、やはり過去の作品「ボーン・コレクター」や「ウォッチメーカー」を事前に読んでおくと面白さが違いますよ。