陽だまりハウスでマラソンを | 晴走雨読な日々〜Days of Run & Books〜

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晴れた日は山に登り街を走り、 雨の日は好きな音楽を聞きながら本を読む
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ランニングをやっているとと、いつの間にか「マラソン」という言葉に反応してしまうのは我ながら笑ってしまいますが、こんなタイトルの映画を見つけました。

オリンピックで優勝したこともある元マラソンランナーが年老いてから再びフルマラソンに挑戦する、というあらすじは予告編でだいたい分かっていたのですが、正直あまり期待をせずに観に行きました。

今月から仕事を15時で切り上げることが出来るようになったので、平日に映画館に行くと言う楽しみがひとつ増えたのです。

上映されていたシネリーブル梅田は定員100人程のミニシアターです。平日の夕方ということもあり、観客は20人ほどがまばらに座っている感じでした。

ドイツ語の映画なので字幕を頼りにした割にはそれほど複雑なストーリーでも無いのでとても分かりやすかったです。「ロッキー」のマラソン版みたいのを期待していたのですが、予想に反してなかなか考えさせられるストーリーになっていました。

妻の病気を機に老人ホームに入った主人公のパウルは、退屈なレクリエーションや規則に馴染めず、若い頃を思い出すようにホームの庭を走り始めます。最初は奇異な目で見ていたホームの他の住人や療養士も次第に彼の熱意に影響されて応援するようになるのですが.....。

年老いた人の終の住処でもある老人ホームのあり方は、ドイツでも日本でも同じような問題があるようですね。老人達に生き甲斐を持たせるためにホームの人間に半ば強制で集団行動(もの作りやコーラスなど)を取らせるのは果たして本人達のためになっているのでしょうか。

子供が年老いた親と同居して面倒を見るのが理想ですが、それができない場合の選択肢が限られるのは日本も同じことですね。

そんな問題をさらりと織り込みながら、主人公とその妻がお互いを慈しみながら生活をするシーンは危なっかしいながらもほのぼのとした気持にさせてくれます。

70歳を過ぎたパウルが再び走り始めた理由は、自分の生き甲斐を見つけるためでもあり、病気の妻を元気づけるためでもあったのです。

おそらくエンディングはこうなるだろうという予想通りの結末でしたが、結構感動的なシーンもあったりして派手さはないもののなかなかよく出来た映画でした。

欲を言えばマラソン大会のシーンをもっと長く流して欲しかった。実際のベルリンマラソンを舞台にして撮影したということなのですが、かなり端折り気味で大会の雰囲気やレースのシンドさがイマイチ伝わって来なかったのは残念です。

主人公がオリンピックスタジアムにゴールするシーンも、4万人が参加した大会にもかかわらず、演出の都合でしょうがたった一人だけがトラックを走っているという撮り方をしていて、感動するというよりは不自然さが気になりました。たくさんのランナーが走る中でスポットを浴びさせるようなカメラワークが欲しかったですね。

それと「陽だまりハウスでマラソンを」というベタな日本語のタイトルはどんなもんでしょう?確かに内容を的確に表してはいますが、もう少しシャレた作品名にできなかったんでしょうか。

ランニングに年令は関係なくいくつになっても出来るとはよくいわれます。この映画を見終わってから果たして自分は何歳まで走れるだろうかと考えながら、すっかり日が沈んで暗くなった街を仕事帰りの人たちに混じりながら駅に向かって歩き出しました。