「スティーグ・ラーソンの”ミレニアム”の次はこれだ!」とか、「F.フォーサイスの”ジャッカルの日”以来の快挙!」とかいうキャッチコピーにつられて、話題になっていた”ピルグリム”を11月始めに読み始めて3ヵ月、やっと全3巻を読み終わりました。
3巻と言ってもトータルで1,200ページほどなので、その気になればひと月もかからずに読みきれるはずなのですが、前にもこのブログで書いたように本を読むことに充てていた通勤時間が極端に少なくなり、文庫本一冊読み終えるのにひと月もかかる始末です。
さて、肝心のブックレビュー。
”ピルグリム”

書いたのはイギリス生まれのオーストラリア人テリー・ヘイズ、もともとは ”マッドマックス2” などの映画の脚本家でこれが作家デビュー作ということです。
ストーリーは簡単に言ってしまえば、イスラム出身のテロリスト ”サラセン” が企てたバイオテロを察知したアメリカが、それを阻止する為に伝説の諜報部員 ”ピルグリム” を送り込み阻止させるという、まさに9.11以来のイスラム世界対自由主義世界の構図を背景に、今話題のイスラム国のテロをも連想させる現代版”ジャッカルの日”という内容です。
ニューヨークのホテルで、身元が判らないほど惨殺された女性の遺体が発見されるところから物語は始まります。それだけだとただのサスペンス小説のようですが、そこから大きく展開して舞台はアメリカや中近東のみならず、アジア・ヨーロッパへと広がり、過去や現在の出来事が時間を越えて綴られていきます。
1巻目は以前にも紹介したように、二人の主人公の生い立ちがさまざまなエピソードと共に語られ、なかなか本題のストーリーに入らないのですが、これらのエピソードがまるでジグソーパズルのピースになり、後のストーリーの伏線として生きてくるのです。
2巻目の後半あたりから物語が動き始め、俄然面白くなります。イスラムの過激派組織の内容や、アメリカの諜報組織を始めとする情報のやりとりなど、フィクションの世界とはいえとても面白く描かれています。
すこしずつパズルのピースが埋まって行き、事件が解決した後も物語の途中で書かれた何気ないエピソードから繋がる展開が待っていました。さすがに映画の脚本を多く手がけただけあって、最後まで読者をあっと驚かせるしかけがあり、そのプロットの巧みさはさすがです。読み終えた後は久しぶりに面白い本を読んだ満足感が残りました。
最初からそのつもりだったのかもしれませんが、早速映画化の話が持ち込まれていて近い将来に公開されるようです。
物語全体の出来からすると私は”ミレミアム”のほうが好きですが、この”ピルグリム”も評判どおり多くの人が楽しめる作品になっています。聞くところによると、どうやら続編の予定があるらしいのですが、とても楽しみです。
各章の区切りも短く、翻訳もこなれているので海外小説にしてはとても読みやすくなっています。今年最初のオススメ本です。