短編小説『影喰いの剣④』

 

エピローグ:朝日と目覚め

静かな朝⎯⎯

夏陽は学園の屋上で横たわる玲のそばに腰を下ろしていた。


玲の顔には疲労の色が残り、髪が少し汗で張り付いている。

それでも、夏陽はその顔にどこか穏やかな表情を見て取った。


「……無茶ばっかりする奴だ。」


夏陽は静かに呟き、玲の額にかかった栗色の髪をそっと払いのけた。


そのとき、玲が小さく呻いた。


「……う……。」


瞼がゆっくりと開き、赤みがかった茶色の瞳がぼんやりと夏陽を見上げる。


「君……どうして……?」


「お前が暴走したから、止めただけだ。」


夏陽は冷静な声で答えたが、その目には安堵の色が浮かんでいた。


玲は小さく目を伏せ、小さな声で呟いた。

「……また、迷惑をかけたね……。」


夏陽はしばらく無言だったが、静かに答えた。

「お前が無事なら、それでいい。」


その言葉に、玲の目がわずかに揺れる。

それでも、彼は少しだけ微笑んで、力なく呟いた。

「……本当に、不思議な人だね。」


夏陽は黙ったまま立ち上がり、玲に手を差し出した。


「立てるか。」


玲は差し伸べられた手をそっと掴むと、夏陽の力を借りてゆっくりと立ち上がった。


朝日が昇る中、二人は学園の屋上に並んで立っていた。


玲は遠くを見つめながら静かに呟く。

「君が隣にいてくれるなら……僕もこの力を受け入れられる気がする。」


夏陽は隣の玲を見下ろし、短く言った。

「それなら、隣にいる。」


玲はその言葉に驚いたように目を丸くし、すぐに静かに笑みを浮かべた。


朝の柔らかな光が二人を包む中、玲はそっと目を閉じた。


「……ありがとう、夏陽。」


その言葉が静かに空に溶けていく中、朝日が二人を優しく包み込んでいた。


彼らが迎える未来はまだ未知のまま

⎯⎯それでも、その一歩は確かに始まっていた。