エマ・ストーンは『哀れなるものたち』のベラのことを、自分の演じた「もっとも偉大なキャラクター」だと語っている。
本作には最高のエマ・ストーンが刻まれている。
ヨルゴス・ランティモスは大きなバジェットで何一つ作家の個性を失うことなく、
むしろこれまで以上にクリエイションの自由を手に入れ、
マッドで突然変異的な世界の構築に磨きをかけている。
まるでこの映画を撮るために映画作家になったのではないかと錯覚させるほどに。
すべてのシーンが飛び出す絵本のように瞳にめがけて飛び込んでくる。
『哀れなるものたち』は不当な扱いを受けた女性、
母親の人生を生き直す、
物語を正しい方向に書き直す娘の戦いの記録だ。
ベラ・バクスターというヒロインは、フランケンガールでもマリオネットでもなく、新しい人間の姿なのかもしれない。
本作の橋の欄干から身投げをするファーストシーンは、撮影の最終日に撮影されたという。
エマ・ストーンはインタビューでこのときの感動を涙ながらに語っていた。
文 / 宮代大嗣