死を覚悟したことがありますか?
こんな言葉を準備しました。
レンタルナンバー21
いまから10年前のことでした。
突然幹部6名を含めた社員30名が雪崩の如く退社していったのです。
きっかけは私の右腕として会社を切り盛りしていた専務の造反でした。
彼は幼馴染みだっただけに、人格否定をされたような苦しみに苛まれました。
思い詰めて遺書を書き残し、当てもなく向かった先は京都でした。
死を覚悟した時の精神状態はいまもよく覚えています。
目にするものすべてに色がなく、寂しい世界が眼前に広がっていました。
私は当てもなく京都の街を彷徨っていたのです。
ある串カツ屋に入った時に、店主が何気なくどこから来たのかと尋ねてきました。
上の空で返事をすると、「福岡ね、一蘭のラーメン美味しいよね」と言うではありませんか。
私は驚きました。そしてこの瞬間から徐々に現実世界へと引き戻されていったのです。
一蘭のラーメンを待ってくれている人がいる。
私には家族も部下もいる。逃げてはいけない、もう一度頑張ろうと私は意を決しました。
行列のできる人気ラーメン店として知られる一蘭(いちらん)。
社長である吉冨学氏に、今日までの歩みについて語っていただきました。
『致知』2012年12月号より
ひとことキーワード
逃げてはいけない。
石井ゆきお