ミユちゃんとおしゃべりカラス
やわらか町には、どこにでも小さな不思議がありました。
その日、三年生の ミユちゃん は、学校の帰り道を走っていました。
いつも元気いっぱいで、少しおてんばな性格です。
「はやく帰って、おやつ食べたいー!」
そう叫びながら、町の小道を駆け抜けます。
すると、頭の上で カラスの鳴き声 が聞こえました。
「カーカー……!」
ただのカラスかな? と思ったのもつかの間、
カラスが空から降りてきて、道端にちょこんと止まりました。
「やあ、ミユちゃん」
カラスが、ぺらっとしゃべったのです。
「え!? カラスがしゃべった……!?」
ミユちゃんは目を丸くしました。
でもカラスは、それが何? とでも言いたげに、頭をかしげます。
「ぼく、おしゃべりカラスだよ。町の不思議なこと、ちょっとだけ教えてあげようか?」
ミユちゃんは、走るのをやめてカラスの前にしゃがみました。
ちょっとドキドキするけれど、好奇心の方が強いのです。
「えっと、まずは……ここだよ」
カラスが羽をぱたぱたさせると、道の脇にある小さな公園のほうを指しました。
「なにがあるの?」
ミユちゃんが尋ねると、カラスは少し誇らしげに胸を張ります。
「ここにはね、“笑う石”があるんだ」
公園の片隅には、小さな丸い石がありました。
近づくと、
「ふふふ……ふふふ……」
ほんのり小さな声で笑っているように聞こえます。
ミユちゃんは思わず手をのばしました。
「わぁ……かわいい!」
触れると、石はほんのりあたたかく、手にすこし軽い振動が伝わってきます。
どうやら、町の中には、こういう “ちいさな不思議” がいくつもあるらしいのです。
カラスは、ミユちゃんの肩にとまりました。
「実はね、ぼくはこの町を見守ってるんだ。町の人が気づかないちいさな幸せを集めて、夜になると、みんなの夢にこっそり届けてるんだよ」
「え!? 夢に?」
ミユちゃんは目をまんまるにして聞きました。
「そう。だから、町の人たちは知らないけど、毎晩ちいさな奇跡が生まれているんだよ」
ミユちゃんは、自分の胸の中がぽかぽか温かくなるのを感じました。
その日の夕方、ミユちゃんは、道で泣いている小さな男の子を見つけました。
「どうしたの?」
ミユちゃんが聞くと、男の子はうつむいたまま答えました。
「ぼく、ビー玉なくしちゃった……」
ミユちゃんはにっこり笑いました。
「じゃあ、探してあげる!」
カラスも上から見守ります。
ふたりで道をくまなく探すと、
「あ、あった!」
男の子の帽子の下に、小さな青いビー玉がころんと光っていました。
「ありがとう!」
男の子がにっこり笑いました。
ミユちゃんも、自然と笑顔になりました。
「ほらね、ちいさな奇跡は、探すと見つかるんだよ」
カラスがそう言った気がしました。
ミユちゃんは空を見上げ、そっと手を振ります。
「また、見つけに行こうね!」
夜が近づき、カラスは羽を広げました。
「じゃあ、ぼくは夢の世界へ帰るね。また町の不思議、見せてあげるから」
ミユちゃんは手を振り返しました。
「うん! まってる!」
カラスは夜の空に飛び立ち、夕日と一緒に消えていきました。
ミユちゃんの心の中は、今日見つけたちいさな奇跡でいっぱいでした。
町にはまだまだ、不思議があふれている。
そう思うと、わくわくして楽しく眠れそうでした。