(試作映画パーティで、ダンサーのキャシーを発見して場を取り繕うドン。)

 

(宮廷風の重いかつらをつけ、よろけるリナを見たロッドたちのリアクション。)

 

土曜と日曜は、伊勢崎市文小ホールで、「A-ile」の2回公演。

 

土曜日は午前中に照明や音響の仕込み。特に映像を流すためのプロジェクター設定など、これまでにない工夫と努力を要する舞台設定である。

 

受付や外回りには、姉妹劇団のアラムニーメンバーがスタッフとしてスタンバイ。

 

何とか間に合わせて、午後2時からゲネプロスタートとなる。

 

出と入りのきっかけや、引割幕の開閉タイミングなど、細かな調整をしながら進行するが、経験豊富なエールメンバーは次々と課題をクリアしてしまう。

 

午後6時開演。

 

熱中症注意報が出されるほどの暑さの中、大勢の観客を迎えることができた。

 

第一部、ミュージカルの名作「雨に唄えば」が、華やかなダンスシーンからスタート。切れの良い振り付けで、たちまち映画の街ハリウッドの雰囲気を生み出す。

 

ジーン・ケリーの映画と同様、チャイニーズシアター前の場面では、進行役のジャーナリスト、ドラ・ベイリーが闊達にしゃべりまくる。

 

長文のセリフであるが、メモを取る演技で間違えないようにするのは熟練の技。

 

ドンとコズモの下積み時代を表す、「調子は上々」のダンスパフォーマンスでは、小型のバイオリンを使うコメディタッチの振付で、客席の笑いを誘う。

 

ストーリーの主軸となるドンとキャシーの出会いも、宝塚と同じバス停のセットを作り、警官も登場してエスプリを効かせる粋なシーンになった。

 

そして、いよいよ大スクリーンと小スクリーンに映し出される、白黒のサイレント映像が面白く、新鮮な印象を観客に与えることが出来た。

 

トーキー映画の台頭で、苦しい経営を迫られるモニュメント映画だが、起死回生のアイデアを出した後に、雨の中で歌い踊る有名なシーンがある。

 

徹夜で朝を迎え、雨を心配するキャシーに向かってドンが言う言葉。

 

ドン  傘をさしていくよ。だけどね。僕の周りだけ、陽が照っているんだ。

 

一幕ものであるが、エールの強い意志と努力の成果がぎっしり詰まった、見ごたえのあるミュージカルになったのは素晴らしい。

 

大女優リナ・ラモントは、いかにして自分の地位をキャシーに譲るのか。

 

ドンとキャシーの恋の行方は。

 

ハラハラドキドキの展開から、一気に大団円へ向かう機知に富んだ終幕で、笑いと涙と共に、大きな感動を呼ぶことができた。

 

休憩後は、第二部「Fall of  Saigon」。

 

世界中にファンを持つ「ミス・サイゴン」を、エールテイストに再構成した作品。

 

約1時間の舞台ながら、オリジナルに迫る迫真の演技が、観客の心をつかむ。

 

「火がついたサイゴン」の、娼婦と米兵のからみは、さすがのクオリティ。

 

そして、ストーリーをけん引するエンジニアの熱演が、キムとクリスの悲恋を際立たせ、ヘリコプターを表すムーブ照明や音響が、臨場感を高める。

 

地方都市では、なかなか見ることのできない作品であるから、取り組んだエールの情熱に対し、客席から惜しみない拍手が沸き起こった。

 

この2回公演は、まさにA-ileでしか創れない、質の高い舞台を目指すメンバーの、面目躍如と言えよう。