(映画版で、トーキーの撮影に臨むドンとリナは、セリフを勝手に変えて大騒ぎ。)

 

映画が、サイレントからトーキーへ移り変わる時代のハリウッドで、巻き起こる悲劇喜劇を題材にした、古典的な名作ミュージカル。

 

多彩な歌とダンスに加え、複雑な人間関係もある「雨に唄えば」の舞台化は、かなりハードルが高い。

 

しかし、多くの課題をクリアしつつ、創り上げてしまうのが「A-ile」の底力だ。

 

日曜日は、久しぶりのエール練。

 

使用する音響はほとんどそろい、大スクリーンに投影される白黒映画も、都内の撮影所で本格的に制作したという徹底ぶり。

 

ミュージカルに精通し、あくなき挑戦を続けるメンバーだからこそできること。

 

まずは第一場。チャイニーズシアター前から、亜空間のシーン。

 

進行役のアナウンサー、ドラ・ベイリーはもと舞台女優の設定なので、マイクを持ってステップを踏みながら解説する。

 

声を多彩に操り、3方向に体を向けるテクニックは、熟練の技で惹きつけられる。

 

亜空間の「調子は上々」では、ドンとコズモのコンビが、コメディアンとして歌い踊るのだが、実際にバイオリンを使って笑いを取るのが素晴らしい。

 

第二場では、スマホに収録された映像をチェックしながら、映画会社の内幕を見せるスリリングな展開へ進めていく。

 

そして第三場。ハリウッド大通りで、女優を目指すキャシーが、ファンに追われる人気スタードンと出会う重要なシーン。

 

ドン 「フェアウェル、舞台女優よ。別れは甘き悲しみ…」など、シェークスピア調の語りが続くが、これもクリアだ。

 

そのキャシーは、実は雇われダンサーであり、シンプソン邸でのパーティで踊り、大失態を演じてしまう。

 

ここからドラマは急展開。

 

誰もつかめなかったドンのハートは、予想もつかない田舎出の娘に惹かれていく。

 

登場人物全員が、重要なキャラクターとしてストーリーに絡み、自己主張する。

 

大集団のダンスシーンや、ソロ・ソリの繊細な歌唱など。

 

まだ荒削りながら、8月の本番へ向かって着実にレベルアップする姿は頼もしい。

 

課題としては、1930年代の華やかだが退廃的な雰囲気を、体の使い方や声の出し方で表現すること。

 

喜劇ではあるが、底の浅いドタバタに終わらず、観客の心に残る重要なメッセージを発信すること。

 

指導された部分を解析し、さらに高めようと努力するエールの舞台は、この作品でさらに輝きを増すに違いない。