(リナ・ラモントのあでやかな女官姿に魅了される、騎士役のドン・ロックウッド)

 

 

 

(ダンスや演技だけでなく、抜群の歌唱力を持つキャシー・セルダン)

 

日曜日は、3週間後に迫ったエール公演の総合チェック。

 

稽古場のホールには、すでに大量の衣装や道具類が置かれ、パソコンを駆使した楽曲の準備もOK。

 

本番は、伊勢崎市文会館小ホール(約500席) で、8月17・18日の2回公演。

 

いずれも無料であり、高いクオリティの名作ミュージカルを堪能できる。

 

しかも今回は、ミュージカル映画の傑作「雨に唄えば」と、世界中で公演されるミス・サイゴンを音楽で綴るショー「Fall of Saigon」の2本立て。

 

酷暑の続く、異常な今年の夏を乗り切る、カンフル剤になること請け合いだね。

 

前回稽古からの変更部分を打ち合わせてから、全員衣装着用でスタート。

 

まず、1927年のニューヨーク。チャイニーズシアター前で、サイレント映画の大スター、ドン・ロックウッドと、リナ・ラモントが登壇する場面。

 

エール版では、ピアノ奏者のコズモやその恋人でダンサーのオルガもこの場面に加わり、ストーリーをつむぐ。

 

現代の世界情勢を取り込んで、オルガはウクライナ移民の設定である。

 

そして、エールならではの大仕掛けで、サイレント映画「宮廷の反逆児」の映写も行われるなど、無料公演とは思えない本格的な作りになった。

 

ハリウッド大通りでは、追っかけファンから逃れるドンが、バス停留所でバーレスクダンサーのキャシーと出会う。

 

舞台女優志望のキャシーだが、この出会いにより映画女優への道を歩むことになる。

 

撮影所では、所長のシンプソンが、トーキー映画の登場で経営に不安を抱えるものの、専属監督のデクスターたちは、気にも留めない。

 

なぜなら、2大スターの評判は高く、サイレント映画は永遠に続くと思ったから。

 

ところが、他の映画社では次々にトーキーへ移行し、観客もそちらに流れてしまう。

 

ここに至っていよいよトーキーかと思ったものの、スターのリナは声に難があった。

 

喜劇映画であるが、恋人同士のすれ違いや、様々な人間模様が織りなされ、あの土砂降り雨のダンスシーンなど。見どころ満載なのが名作のゆえんと言える。

 

それに新解釈を加え、気の利いたセリフで観客の心をつかむのだ。

 

経験豊富なメンバーは、指摘する演出意図をすぐ汲んで、メリハリのある場面に高めてしまうのが素晴らしい。

 

休憩後は、ミュージカルショー「Fall of Saigon」の全体チェック。

 

私の役割は、舞台袖の操作卓で、明転・暗転などの転換に指示を出すこと。

 

みんなの意気込みは大変なもので、曲によりキャストを変えたり、アオザイのカラフル衣装から、ベトナム兵やアメリカ人への着替えなども、手際よく進める。

 

本番で、会場まで足を運んでくださるお客様に満足していただこうと、最大限の努力をしていく。

 

そんなエールスピリットを感じさせる、力のこもった集中稽古であった。