(ルドルフの死に使う拳銃や金貨の入った袋、トートがルキーニに託す鋭利なナイフ)
25thを迎えたアラムニーメンバーが、歌や演技、そしてダンスの振り入れに躍動する季節になった。
それに伴い、衣装や小道具などの作成に入る。
とりわけ小道具は、稽古を進めるために、なくてはならぬアイテムだ。
第一幕に使用するシシーの赤い手毬やリヒテンシュタインが使う皇后の予定表などは、すでに完成して先週の稽古に使用できた。
来週行う第二幕の場当たり稽古では、ルキーニの持つ写真販売ケースや、シュヴァルツェンベルクが使う初期オートマチックの拳銃などが必要になる。
19世紀末の時代背景をもとに、なるべく実際のものに近くなるよう工夫する。
特にシシー殺害のナイフは、ルキーニが先端を鋭利にした、特別な錐(きり)を使用するのが史実である。
しかしこのミュージカルは、死をイメージする装飾性に富んだナイフを、黄泉の帝王トートが暗殺者ルキーニに渡すのだ。
そこで写真のような、銀と青を基調にした美しいナイフを作ってみた。
マダム・ヴォルフの娼婦館で使う金貨袋には、本物のコインを沢山入れたので、チャリチャリとリッチな音がするはず。
第二幕は、ハンガリーの首都、ブダペストの大聖堂前からスタート。
1867年にオーストリアとハンガリーの間で和約が成立。アウスグライヒ体制として、皇妃エリザベートが積極的に市民と関わり、大きな役割を担っていく。
しかし、エルマーたち反体制の革命家にとって、この和約は屈辱でしかない。
ルキーニが、歴史の語り部として、軽快に舞台と観客をつなげる「キッチュ」。
死を賭した皇帝への直訴。一触即発の状況で、エリザベートは気高く振舞い、血気盛んな革命家たちの気持ちを押さえてしまう。
その姿にトートも魅了され、孤独なルドルフへと矛先を変えざるを得ない。
そして、公務に疲れた皇帝フランツは、貴族たちに勧められるまま娼婦の館へ。
第一幕で張り巡らせた伏線が、オーストリアとハンガリー二重帝国の軋みにより、抜き差しならない状況となって、大きな感動と共に回収される。
リーヴァイ・クンツェが作った、ヨーロッパティストの耽美的音楽に、アラムニーメンバーが、生と死のせめぎ合う表現で挑む舞台。
9月1日に、県立こどもの国ホールで上演する「美女と野獣」と並行し、暑い夏をさらに熱く、表現力を高める日々が始まっている。