(前橋公演で、キャピレット家の意地にかけて決闘にのぞむ、誇り高きティボルト。)
(藤岡公演で、ロミオを守るべく身を挺する、モンタギュー家の詩人マキューシオ。)
4月に入り、満開を迎えた桜のもとで、ようやく新学期がスタート。
アラムニーA’sも、新座長を中心に25thが活動を開始し、演技・歌・ダンスなどの長も決定。いよいよ次回作品選びが本格化する。
これまで培ってきたアラムニーの舞台は、その名の通り高校を卒業した女子たちが、情熱と可能性を最大限に生かした、創造性の高い空間つくり。
大学で、複数の異なる専攻分野を、同時に主専攻(メジャー) として学ぶように、学業とアラムニーを「ダブルメジャー」(double major)ととらえて、研鑽に励む。
前座長の石綱さんは、「ロミオとジュリエット」のパンフ挨拶文を、「変わらないために変わり続ける」「常に新たな思いで挑み続ける」と綴っている。
学生劇団として、真摯にミュージカルに取り組む心意気があり、その理念は次の代へつながれていく。
では、「ロミオとジュリエット」の舞台では、どのように描かれたのであろう。
脚本執筆にあたって最も重要視することは、すべての登場人物に存在感があり、生きる意義としての哲学性を持つこと。
この哲学空間において、自分の生きざまを最も赤裸々に見せたのは、ティボルトとマキューシオである。
ティボルトは、大商人キャピレット家を新たな未来へ向かわせるべく、ジュリエットの成長に期待をかける情熱の男。
マキューシオは、古い貴族の家系で培われた美しい世界観を、ロミオに繋がせようとする浪漫派の詩人。
ティボルトが死に際して、ナンバー2のアントニーへ伝える言葉は。
「生きるほうが、死ぬよりつらいこともある。そんな時は、俺を思い出せ。信念を持 ち、心に炎を燃やせ。俺の死は、マキューシオへのつぐないだ。」
マキューシオが死に際して、仲間たちに言う言葉は。
「命とは不思議なもの。有るときは気にもしないが、無くなるときはあわてふためく。…愛しい命よ、もうふらふらだ。明日になったら俺を探せ。まじめな顔して、墓の中にいるから。」
立場の違う二人が、それぞれの鮮烈な生き様を見せる。
強い思いを残そうとするティボルトと、死を受け入れ生を達観するマキューシオ。
哲学の大きな命題である、生と死のあり方やとらえ方が、アラムニーの鮮烈な舞台で描かれる。
タイトルロールであるロミオとジュリエットだけでなく、板に乗る全員が、生々しい人間としての存在を表現して、観客へ問いかける。
輝くはずの青春の蹉跌、避けられない不条理な出来事は、昔も今も変わらない。
アラムニーメンバーは、ミュージカルの専門知識を「ダブルメジャー」として学び、人間として大きく成長しつつ、次回作品へ向かっていく。