(サイレントからトーキーへ。何とか対応しようとアイデアを出し合う仲間たち。)

 

(誤解が解けて真実の愛を確信し、ドンの胸に飛び込むヒロインキャシー。)

 

日曜日は、永明公民館ホールでのミュージカル劇団「エール」集中稽古。

 

社会人の女性のみで構成する「A-ile」は、とりわけ教職にあるメンバーが多いため、部活の指導で遅れたと駆け込みもあったが、アップに入る時間には全員集合。

 

このホールは新しくて、とても使い勝手が良い。

 

さっそく今夏公演予定の、伊勢崎市文化会館小ホール(500席)に合わせ、サス位置や引割幕などのバミリを行う。

 

久しぶりの指導であるため、まず演出方針としての「喜劇性」について解説。

 

日本語と英語をミックスさせた、フットワークの良さがこの作品の命であること。

 

観客の心をくすぐる、示唆に富んだセリフが多いので、とりわけ滑舌に注意する。

 

それぞれのキャラクターに見せ場があるため、演技に個性的なメリハリが必要。

 

受け身の演技でなく、アメリカ人らしい攻める意識を持つこと。

 

ミュージカルとしての体の使い方や、舞台を機能的に使う足の運びなど、実際にやって見せると、経験豊富なメンバーも新たな発見があるようだ。

 

現段階では、それほどセリフ覚えや使用楽曲の準備など期待していなかったが、セリフはほぼ入っており、音楽もパソコンを使って対応できる。

 

それぞれの役割分担が明確で、指示するとすばやく反応するのがとてもいい。

 

まずはオープニング。

 

脚本には書かなかったが、全員登場のオーバーチュアダンスをやりたいとの意向であり、すぐ修正してイメージを作る。

 

ジーンケリーの映画と同じセンスで、ワクワクドキドキの1時間40分ほどの舞台。

 

最初に登場する、進行役ドラ・ベイリーの長セリフもよどみなく、基本通り体を使って華やかに語るのが素晴らしい。

 

映画や宝塚では、しゃべるだけのちょい役であるが、エールではほぼすべての場面に登場し、歌い踊る役割を持つのだ。

 

サイレントからトーキーへの移行に対応する、映画会社のドタバタ喜劇に、大スタードン・ロックウッドと新人女優キャシー・セルダンとの純愛をからめたストーリー。

 

要所要所に仕掛けた「笑い」のエッセンスをどのように表現するのか。

 

大きなポイントは、美人ながら発音に難があるリナ・ラモントの演技。

 

座長でもある由佳さんは、この難役に挑んでセリフはもう完璧であり、新たな表現方法を模索している。

 

大爆笑の外れた声色や、パイを顔に投げつけられる演技も、工夫があって面白い。

 

着替えの時間が欲しいとの申し出があり、即興で1分ほどのセリフを書きあげると、すぐスマホで写し、たちまち覚えてしまう。

 

数年前の稽古中であれば、追加セリフは全員集合のメモ取りであったが、今や隔世の感だね。

 

そして、キャシーの純愛が感動を呼ぶラストシーン。

 

世間知らずの若い女優が、大スターと結ばれるシンデレラストーリーであるが、役作りが進んでいるため、ストンと腑に落ちる大団円となった。

 

もともとは、ハリウッドらしい華やかさが売りの映画であり、主人公が雨の中を歌い踊るシーンが有名だが、エールは心理描写にもこだわった新鮮な舞台に挑戦。

 

これから衣装や小道具なども揃ってくるにつれ、歌も演技も洗練されるはず。

 

今年の夏は「エール」の舞台で、ぜひミュージカルの名作をご鑑賞いただきたい。