三国志は、英雄豪傑譚であるから、この映画も、ギリシャ神話のトロイ戦役やアーサー王伝説的な、血沸き肉踊る作品だろうと思っていた。

しかし、残念ながらいくつかの挿話(エピソード)をつなげる展開と、キャラクターの表情を大写しにして動かさない手法のため、客席のこちらは距離をおかれた印象になった。

黒澤明監督の「七人の侍」を研究したというが、勧兵衛や菊千代の、あの表情のダイナミズムは、役者の力量と巧みな編集によるものだ。

戦闘場面はCGを効果的に使用して、迫力が伝わる。それでも「トロイ」や「キングダム・オブ・ヘブン」「グラジエーター」と比べると立ち回りに隙があるし、兵士の表情に覇気が感じられない。

総じて、迷いのある不完全な脚本と編集のキレの悪さ、使用音楽に魅力がないなどにより、楽しみにしていた三国志の興奮は得られなかった。

いや、もしかしたら、これは日本人が再編集した、日本人向けの映画だったのかも知れないぞ。それならあの居心地悪そうな、英雄たちのアップの表情もわからなくも無い。