25
「えりかさん?」
「ん?なぁに?」
みわとえりかはパン屋の仕事が終わり片付けをしていた。
新しくバイトも雇ったしそれなりに店も繁盛していた。
季節も夏から秋へ。
そろそろ冬も近付いていた。
「このままパン屋、続けるんですか?」
「もちろん、続けるよ。智くんが譲ってくれたの。大事にしなくちゃ。」
「そっか…あの、私…」
「うん…二宮くんに会いに行く?」
えりかはみわを見てニコッと笑った。
「ふふふ、えりかさんには適わないな…」
「そんな事ない。みわが苦しんでるの分かってたよ。会いに行って来な。ちゃんと話しておいで。」
「えりかさん…」
みわはえりかに抱きついて泣いた。
「もう、泣かないの。私の方が泣きたくなるじゃん。」
えりかはみわの頭を優しく撫でた。
それから片付けをサッと済ませると店を閉めた。
「えりかさんは?大野さんには会いに行かないんですか?」
「私は…もういいんだ。彼の気持ちは私に戻ることはないよ」
「そうなのかな…」
「うん。きっとね、戻らないと思う。」
「でも、もし戻ったら?えりかさん、まだ好きなんでしょ?」
「ふふ、うーん、どうかな…?好きなのかな。もう分かんなくなっちゃった(笑)」
「そっか。」
「うん。みわは?会いに行ってまた気持ち伝えるの?」
「分かんない…」
みわは、二宮には会いたいと思っていたが会ったところでどうするか、までは考えていなかった。
片付けが終わり二人は店を出てそれぞれに帰った。
「じゃあ、また明日ね、みわ。」
「はい。また明日。」
みわはえりかとは別れると少し迷ったが歩き出した。
しばらく歩いて大野のマンションのまで来た。
インターフォンを鳴らすと「はい。」と返事がした。
すぐに二宮だと分かった。
「あの…みわです、開けてもらえますか?」
「え?みわちゃん?ちょっと待ってて。」
すぐにドアが開きエントランスへと入った。
大野の部屋の前まで行き、もう一度インターフォンを鳴らすとすぐに二宮がドアから顔を出した。
「みわちゃん、どうしたの?」
「あの、大野さんは?」
「あぁ、今ちょっと出てる。」
「そっか…」
「なに?大野さんに用だった?」
「違う…二宮くんに…たぶんここだと思ったから。急にごめんね。」
「うん。とりあえず上がって…」
「いいの?」
「いいよ。」
みわはと二宮はリビングにテーブルを挟んで座った。
久しぶりに会う二宮にドキドキしながらみわは、口を開いた。
「今日来たのはね、最後にもう一度話したかったの。」
「最後…?」
「ん…うん。最後。大野さんと上手くいってるんでしょ?」
「まぁ、うん。」
みわは、何を話そうか…言葉に詰まった。
二人の間に沈黙が流れた。
続く