24
結局、えりかとはそれきりになった。
パン屋を辞めたことは二宮には黙っていた。
「大野さん?」
「ん?」
同じベッドで寝ていたカズが俺に話しかける。
「いつから仕事行くの?」
「仕事?」
「うん…ずっと休み?なの…?」
「なぁ、カズ?」
俺はカズの質問には答えずに違うことをカズに質問した。
「なに?」
「旅行行かない?」
「はっ?」
「1週間…いや3日間でもいいや。」
「でも店は?いいの?」
「カズが辞めたし新しい人が入るまでは定休日にしたんだ。」
「そうなの?!じゃあ、大野さんしばらく休み?」
「そ、休み。だからさ、二人で旅行行こう。なっ?」
俺は横にいるカズの方に体を向けて俺の方を見つめているカズをそっと抱きしめた。
「大野さん?」
「なに?」
「…ううん。」
「なんだよ?言いたいことがあるなら言ってよ。」
「オレ、オレね…」
そこまで言って黙ったカズの口にキスをした。
「ん…」
カズが声を漏らす。
背中に手を回しそっと触れると一瞬ビクっとするカズが可愛かった。
壊れそうなカズを抱いていると好きと言う気持ちが溢れてどうしようもなくなる。
一緒にいたくて、パン屋を辞めた。
これ以上、えりかの顔を見ていると自分が悪いことをしているような気持ちになる。
それにカズが辞めるなら自分も辞めなければならないと思った。
唇を離すと「ふふ」とカズが笑った。
「大野さん、旅行…行こっか?」
「おっ、行く気になった?」
「二人きりでしょ?なんか楽しそう(笑)」
「二人きり…、うん今もな、二人だぞ(笑)」
「あ、そっか。」
「で、さっき言いかけたことは?なんなの?」
「ん、なんでもないよ。」
そう言ってちょっと寂しそうな顔をしたカズを見逃さなかった。
何考えてる?
カズ…
いつの間にか俺の方がおまえに夢中だな。
初めて会ったとき、まかさこんな関係になるとは思ってもみなかった。
恋人と別れてまで、コイツと一緒にいたい…なんてさ。
相手はオトコ…
そんなふうに考えてみても隣を見ると綺麗な顔をして俺を見つめてるカズをオトコだなんて思ったこと…ないかもな。
「カズ?いつも、そばにいろよ?」
「ん…」
いつの間にかカズは眠っていた。
綺麗な顔だな…。
そっと触れないと本当に壊れてしまいそうだ。
俺はそっと抱きしめた。
ベッドの上でカズを抱きしめて目を瞑った。
本当にずっとそばにいてくれるか…?
なんだか、壊れてしまいそうなガラスみたいなそんな存在だった。
続く