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『混乱』和side~
俺は慌てて楓のアパートから出た。
びっくりした…
どういう事?
翔ちゃんがいて、楓に何か食べさせようとしてた?
なんだろう。
ものすごく胸が苦しい。
俺は忘れ物だけを置いて出て来てしまった。
そして何故か走って紗栄子ちゃんのアパートまで戻った。
ドアをバタンと開けて何事もなかったかのようにパスタを食べた。
「…二宮くん?」
「ごめん、冷めちゃったね、パスタ。」
「どうしたの?急に出て行って急に戻って来て…」
「うん…」
俺は何だか胸が苦しくてどうしていいのか分からなくて。
「楓ってさ、好きなやついるのかな?」
そんな事を紗栄子ちゃんに聞いていた。
「えっ?」
紗栄子ちゃんがびっくりして俺を見つめた。
「ごめん…変な事聞いた。俺、帰るね。」
俺は立ち上がって玄関に向かった。
「二宮くん。待って。楓の事好きなの?」
「ん…いや…ごめん。違う。」
俺は自分でも何を言ってるのか分からなかった。
ずっと好きで楓を見てきて翔ちゃんが楓を好きなのも知ってるし二人が上手くいけばいいって、そんな風に思ってきたのに。
なんだか息苦しい。
俺…
すげー好きだったんだな。
楓のこと。
「紗栄子ちゃん、ごめんね。」
俺は玄関のドアを開けた。
「二宮くん!」
紗栄子ちゃんの呼ぶ声が聞こえたがそのまま外に出てドアを閉めた。
続く