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『桃の缶詰』翔side~
カズと二人で話してからしばらく経った頃、楓とカズに連絡した。
«今度こそタイムカプセル、掘り起こしに行かない?»
カズからはすぐに返事が来た。
«いいよ。いつにする?»
でも、楓からは返事がなかった。
既読にならない。
まぁ、遅い時間だし寝たのかな。
そんな事を思っていると楓から返事が来た。
«ごめんね。ちょっと遅くなって。私はいつでもOKだよ。»
«楓、忙しかった?»
«なんで?»
«いや…いつもな割りと早めに返事が来るから珍しいなって»
«ごめん…今日はちょっと熱があって寝てたから。»
«マジ?大丈夫なの?»
«うん。友達が来てくれたから大丈夫。»
«ちゃんと食べたの?»
«まだ…。»
俺はLINEを見て気付くと楓の家に向かっていた。
コンビニで適当に買い物を済ませると先を急いだ。
ピンポン、ピンポンと慌ただしくインターフォンを鳴らすと楓が顔を出した。
「翔くんっ!!」
「ごめん、寝てたよね?」
「ううん、大丈夫。翔くんどうしたの?」
「いや、熱があるなんて言うからさ。」
俺は慌てて来てしまった事を少し後悔した。
「ふふふ、翔くんらしいね(笑)」
「笑うなよ。」
「だって可笑しい。髪乱れてるし。」
「えっ?本当に?」
「うふふ、うん。」
楓は俺を見て笑っていた。
なんだかその姿が可愛くて胸がギュッとした。
「楓、ご飯食べてないんだろ?」
「うん。でもそんなにお腹空いてない。もう熱も下がって来てるし大丈夫だよ。」
「でもほら、適当に買ってきたから。」
俺は買って来た買い物袋を楓に見せた。
「ふふ、翔くん買いすぎだよ(笑)」
楓が口元に手を当てて笑った。
「あ、まぁ、確かにちょっと買いすぎたか(笑)」
「とりあえず上がって。」
俺は楓の部屋に上がるとキッチンへ行き飲み物や食べ物を冷蔵庫に入れたり棚に入れたりした。
「楓、何食べたい?」
キッチンから楓に声を掛けると「何か冷たいものがいいな。さっぱりするもの。」と答えが返って来たので買ってきた缶詰を開けた。
少し深い器に入れるとフォークと一緒に楓の元まで運んだ。
「ほら。これ。」
「これ。私が好きなの覚えててくれたんだ。」
「うん。桃の缶詰。楓さ、小さい時体調悪い時はこれ食べたってよく言ってたよな。」
「翔くん、ありがとね。」
「…うん…」
俺は楓のベッドの脇に腰掛けた。
オデコに手を当てるとまだ熱があるみたいだった。
「楓また熱が上がってきたんじゃない?」
「翔くんは心配症だな…。」
そう言いながら楓は少し咳き込んだ。
「ほら。」
楓の持っていたフォークを取り上げて桃を小さく切って楓の口まで運んだ。
「もう、食べれるから大丈夫だよ。」
「ダメ、ほら、あーんして。」
「ちょっと翔くん。」
俺が楓の口に桃を運ぼうとした時ドアが開く音が聞こえてバタバタと誰か入って来た。
「楓、ごめん…わすれ…えっ?」
「えっ?カズ…」
俺はカズを見て動きが止まった。
「翔ちゃん…なんで…?」
「あ…カズくん、どうしたの?」
カズは楓の質問には答えずに何かをテーブルに置くとそのまま出て行った。
続く