次の日会社に行くと二宮くんもちょうど出社して来た。
「おはよう。」と笑顔で私を見る。
「おはよ。」
「あ、これ。昨日はありがとう。」と手提げ袋を私に渡してきた。
「本当に洗ってきてくれたんだ?」
私は手提げ袋を持って、あれ?と思った。
「二宮くん、これ...?」
「うん。昨日のお礼ね。」
そう言ってニコッと笑った。
お弁当箱が重かった。
作ってきてくれたんだ。
「お弁当なんて作れるの?」
「まぁ、ね。一人暮らしも長いし。」
「そっか。」
「うん。」
私と二宮くんは今日も外でお弁当を食べる事にした。
ベンチに座ってお弁当箱のフタを開ける。
思ったよりも彩りも綺麗だしちゃんとしていた。
「へぇー、すごい!!」
「んふふ。本当に?!」
「うん。みんな手作り?」
「うん、まぁ。」
二宮くんは少し照れたように笑った。
「美味しいよ。」
「良かった。」
心地よい風が吹く。
「...彼氏と仲直りしたの?」
二宮くんは真っ直ぐ前を向いたまま私に聞いた。
「ん?」
「ほら?この前怒らせちゃったみたいだし...」
「...うん。仲直りって言うか.....」
「やっぱり、俺が邪魔しちゃったね。」
「.......」
私は二宮くんの横顔を見ていた。
それに気付いて二宮くんが私を見る。
「ん?」
私が首を横に振ると「ふふ」と微笑んだ。
なんだろう…?
この空気感。
優しい時間が流れていた。
「ねぇ、やっぱり俺についてくる?」
「えっ?」
「一緒に来るかって事。」
二宮くんは今度は真っ直ぐに私を見て言った。
何も答えられない。
二人の間を風が通り抜ける。
「なんて...冗談。なんて顔してんの?(笑)」
「もぅ、からかわないで。」
私は少し膨れっ面をした。
「ごめん、からかってるわけじゃないよ。」
「私、彼にね。ずっと一緒にいたいって言われたの。」
「そっか。じゃあ、俺はフラれたな(笑)」
二宮くんはフッと小さく笑った。
私は何故だか胸がギュッと締め付けられた。
「二宮くん、いつ行くの?」
「...来週かな。」
「来週?!」
「うん。本当は一ヶ月後って言われてたんだけどね。なるべく早く来て欲しいって。」
「そうなんだ...。」
なんだか急に寂しくなった。
「一緒にお昼を食べるのも最後かもね。」
二宮くんはそう言って食べ終わったお弁当箱を袋にしまった。
「先に戻ってるね。」
二宮くんは立ち上がってオフィスのあるビルへ向かって歩き出した。
私は、急いでお弁当箱のフタを閉め手提げ袋にしまうと二宮くんのあとを追いかけた。
「待って。」
思わず腕を掴む。
振り返った二宮くんが「そんな事されたら勘違いしちゃうよ?」
「私、どうしたらいいのか分からないの。」
腕を掴んだまま二宮くんの顔を見つめた。
「じゃあ、ついてくる?彼氏と別れて俺についてくる?」
二宮くんは私の目を真っ直ぐに見つめた。
続く