二宮くんの綺麗な瞳が私をジッと見つめる。
「俺についてくる?彼氏と別れて俺についてくる?」
私は何も答えられない。
「腕...離して...?」
「あ、ごめん。」
私は思わず掴んでしまった腕を離した。
「答えられないって事は俺についてくる気はないよね。それとも迷ってる?」
「二宮くん...私...」
「いいよ、無理しなくても。」
二宮くんはそう言って優しく微笑む。
ギュッと胸が締め付けられる。
私はなんて言っていいのか分からずにオフィスに戻って行く二宮くんの背中を見つめていた。
一緒についてくる?なんて言われて嬉しかったけどやっぱり違うような気がした。
好きだけど。
好きだけど、違う。
翔ちゃんへの好きな気持ちと二宮くんへの好きな気持ちはやっぱり違う。
私は二宮くんに振り回されて自分の気持ちを勘違いしていたんだろうか。
オフィスに戻って少し早いけど仕事を始めた。
いつも通りに忙しい時間が過ぎあっという間に定時になった。
狭い部屋に帰宅してベッドに体を投げ込むと小さく溜め息をついた。
あれから翔ちゃんとは連絡を取っていない。
やっぱり私は翔ちゃんが好きだよ。
二宮くんへの想いは一時の気の迷い。
そうだよね...?
きっと、そうだ。
私は自分に言い聞かせるかのように小さく呟いた。
目を閉じて考えている内にいつの間にか眠ってしまったみたいだ。
スマホが小さく音をたてたのが鞄の中から聞こえた。
ベッドから重い体を起こすとベッドの脇へ置いた鞄からスマホを出した。
翔ちゃん...!
会える?
一言だけのメール。
会えるよ。
私も一言返すとすぐに返事が来た。
待ってて。
えっ?!
びっくりしていつ来るの?とメールを送ったと同時にインターフォンが鳴った。
ドアを開けると翔ちゃんが立っていた。
「どうしたの?!」
「ちょっと近くまで来たから。」
ん?お酒臭い...?
「翔ちゃん、飲んでるの?」
「ちょっと...ね...」
翔ちゃんは私にギュッと抱きついてきた。
「翔ちゃん...?」
「別れようか。」
「えっ?」
翔ちゃんは私の体から離れると今度はしっかり私の目を見て言った。
「別れよう。」
思ってもみない言葉を聞いて理解するまでに時間がかかった。
二人はしばらく見つめ合って動けなかった。
続く