相葉は、封筒を開けた。
ハサミがないので手で少しずつ開けた。
中には写真と手紙が入っていた。
「あっ!」
「どうしました?」
斉藤が運転席から後ろに振り返った。
「ほら、見てよ。」
相葉が斉藤に写真を見せた。
「おー!綺麗ですね。」
「ねっ!やっぱり綺麗だよね。」
相葉は写真をジッと見つめた。
良かった。
本当に良かった。
ハワイから帰って来てすぐに相葉は美紀の病室を訪ねた。
そこには高橋もいて笑顔で相葉を迎えてくれた。
「おかえり。」高橋はそう言った。
「ただいま。」笑顔で答える。
「美紀、ただいま。」相葉は美紀に向かって微笑んだ。
美紀はベッドから起き上がって少しニコっとした。
まだ弱々しい笑顔だったが幸せそうに見えた。
「高橋、美紀は?今日は調子はいいの?」
「うん。まだ立つことは出来ないけどね。今日はすごく調子がいいみたい。」
穏やかな顔で話す高橋も幸せそうだった。
「でも、良かった。美紀が目を覚まして。」
「うん。良かった...。」
高橋は少し涙ぐんでいた。
美紀はあの事件の少しあと目を覚ました。
こんな奇跡的なことはなかなかない。
と、医者は目を丸くして驚いていた。
まだまだ、リハビリは必要だがずいぶん回復している。
いつか歩いて普通にお喋りして。
高橋も姉の真理子も希望を持っていた。
送られて来た写真には美紀がウエディングドレスを着て高橋と並んでいた。
手紙には『俺たち結婚しました。結婚式はしないので写真だけですが、相葉には報告したくてね。また、病室に遊びに来てよ。美紀も少しだけなら話しも出来るんだ。』
短い文が高橋らしかった。
良かった。
本当に良かった。
相葉は何だか泣けてきた。
暗くて長かったトンネルからようやく抜けられたような明るい春の日差しに包まれたような。
そんな気持ちになって嬉しかった。
相葉は送られて来た写真をもう一度見ると手紙と一緒に封筒にしまった。
それを大事に鞄にしまうと「斉藤さん、また明日ね。」と車から降りて自分のマンションへと帰って行った。
斉藤は相葉が無事にマンションに入って行くのを見届けるとその場をあとにした。
マネージャーの斉藤も、また涙ぐんでいた。
良かった。
高橋への嫌な思い出もいつか笑って思い出せるだろう。
斉藤はそんな事を思いながらハンドルを握っていた。
相葉は、自分の部屋へ戻るともう一度写真を出してリビングの壁にテープで留めた。
うん。
いい感じ!
そうポツリと呟いてふっと笑った。
相葉は、 リビングのベランダから外に出ると空を見上げた。
あの時のハワイで見た綺麗な空は一生忘れることはないだろう。
今日は、綺麗な月が出ていた。
「綺麗~」
相葉はスマホで写真を撮ると5人のグループLINEに送った。
「見て、今日の月。」
メンバーからはすぐに返事が来た。
それからしばらくスマホの音は鳴り続けていた。
空に浮かぶ月がキラキラと輝いていた。
嵐、5人のように。
終