ハワイから帰って来て何日経っただろうか。
マネージャーの斉藤から相葉は一通の封筒を渡された。
仕事が終わってマンションへと帰る車の中だった。
「何?」
「あ、それね。事務所に届いてたみたいです。」
「事務所に?」
相葉は、封筒の裏を見た。
裏には“高橋”とあった。
「あっ!」
相葉は思わず叫んでしまった。
運転席の斉藤が後部座席の相葉をミラー越しに見た。
「どうしました?」
「いや。」
斉藤はふぅーとため息をついた。
斉藤も高橋と言う名前は見ていた。
今頃またなんだって手紙なんて...
あの事件の事は斉藤にとって嫌な思い出しかなかった。
けれど...
5人にとってはむしろ絆が深まった出来事でもあった。
本当は警察に突き出すところだが事件にしてしまうと“おおごと”になってしまう。
それこそ、週刊誌やらテレビやら...大変なことになりかねない。
高橋本人も一度は警察に行くと言った。
けれど、あの5人がそれを止めた。
社長もそれはしないでくれ、しなくてもいいと言ったんだ。
そもそも相葉が一番嫌がった。
『俺は大丈夫だから』と。
高橋は一度社長に会いに来た。
謝って済む事ではないけれど...と。
深々と頭を下げた。
社長も特に怒るわけでもなく穏やかに言った。
「もう、いいよ。すべて終わった事だ。」
高橋はもう一度頭を深々と下げると部屋を出て行った。
相葉は、封筒の“高橋”と書かれた名前を見て思い出した事があった。
カズが泣いていた。
リーダーの怪我の事で。
カズが泣いているのにリーダーは笑ってたんだ。
ハワイから帰って来て割りとすぐの頃だった。
続く