朝になりいつの間にかソファーで寝てしまった櫻井が目を覚ました。
他のメンバーは一旦家に帰って順番で相葉の所へ来るように話し合った。
とは言っても意識も戻ったし念のための検査も異常がなければ三日後には退院となる。
櫻井は大きく伸びをして相葉のベッドまで行った。
「雅紀?」
ベッドは空だった。
「あれ?トイレかな?」
部屋の隅にあるトイレのドアを開ける。
誰もいない。
売店にでも行ったかな。
櫻井は相葉が戻って来ると信じて待つことにした。
5分...10分...15分...
いつの間にか一時間も経っていた。
戻って来ない...
櫻井は急に不安になり松本に電話をした。
―もしもし、翔くん?どうしたの?
―雅紀がいないんだ。知らない...よね...?
―いないってどういう事?
―分からない...
―ねぇっ、まさか高橋の所じゃないよね?
―えっ?でも...そっちはもう...
―昨日、カズがさ...
―何?
―昨日さ、話したじゃん?やっと5人揃ってさ。
―うん。話したね。
―監禁された理由や過去の事。で、その時にさ、カズがボソッと言ったんだ。
本当は雅紀、許せないって思ってるんじゃないかって。でも、それ以上に自分が許せないんじゃないかって。
―自分が許せない...って...?どういう...?
―だからほら、誘ったのは雅紀だし。そんな風に誘ってしまった事とか...あの時やっぱりチケットを渡した事...後悔してるんじゃない?
―じゃあ、やっぱり、高橋の所へ...?
―分からないけど...分からないけど...
―俺、行ってくる。高橋のところへ。
―翔くん、大丈夫?俺も行こうか?
―うん。大丈夫だよ。とりあえず行ってくるから...
櫻井は電話を切ると病室を出た。
確か聞いた部屋番号は303。
この病院はよく来るし病院の造りは分かっていた。
エレベーターに乗り下へと向かった。
もう一度エレベーターを乗り継ぎ美紀ちゃんと言う子の病室へと向かう。
病室の前に着くと深呼吸してドアをノックした。
中からこちらへ向かってくる足音が聞こえてドアがゆっくりと開いた。
顔を出したのが高橋だろうか...?
「あの、高橋...」とそこまで言うと「そうです」とすぐに返事が返ってきた。
「相葉は?来てますか?」
櫻井が聞くとすぐに答えは返って来た。
「来てました。」
「来てました?もういないの?」
「さっきまでいたんだけど...」
「どこへ行くとか言ってました?」
「いや...特には。」
「何か変わった様子とかなかったですか?」
「...いつも通りだった...かな。でも...」
「でも?」
「謝ってて。ずっと。もういいからって何度も言ったのに。ごめんって。あいつずっと美紀から離れなくて。俺が身代わりになれたらなって。そう言ってたな。」
「身代わりに...って...」
櫻井は急に不安になった。
「すいません、ありがとうございます!」
そう言うと櫻井は急いで部屋へと戻った。
もしかして部屋に戻ってるかもしれないと言う期待と、、やっぱりいないかもしれないと言う不安。
最上階へ行くまでの道のりが長く感じた。
櫻井は少しイライラしながらエレベーターの階数ボタンを見ていた。
早く早く。
エレベーターの扉が開く前に無理やり手で扉を開けてエレベーターから飛び出した。
相葉の病室まで走りスライドドアを横に引いた。
思いのほか力が入ってドアがバンっと音を立てて開いた。
いないか...
櫻井はガッカリしてソファーにドサっと座った。
どこへ言ったんだ?
雅紀...
身代わりにってまさか...だよな...?
櫻井は不安の中、どうしたらいいのか考えていた。
続く