相葉は美紀の頬に触れた。
ごめん。
そう呟くと涙が頬を伝った。
「俺がコンサートに誘わなければ...こんな事にはならなかった。」
「相葉のせいじゃない。やっと気付いたんだ。誰のせいでもない。俺はきっと相葉が羨ましかったんだと思う。あの日久しぶりに会って何にも知らない相葉を恨めしく思った。」
二宮は黙って聞いていたが我慢出来ずに口を開いた。
「だからって人を傷付けて言い訳じゃないよね?」
「ごめん...俺何やってんだろう。ちゃんと罪は償う。だから...」
「だから?許して欲しいって?都合がよすぎるだろ?」
二宮は少し苛立った。
相葉を傷付け大野にも怪我をさせておいてやっぱり誰のせいでもなかった...なんて。
「まーくん、行こう。」
二宮は相葉の手を取って病室を出ようとした。
「ちょっと、カズくん?」
二宮は相葉の手を引っ張って病室のドアを開けた。
開けたと同時に驚いた。
「わぁっ!」
「あっ!」
目の前に女の人が立っていた。
追いかけて来た高橋が「真理子さん!」と言って驚いていた。
二宮も相葉もその場に突っ立って高橋と女の人を交互に見ていた。
すると女の人が急に声を上げた。
「あれっ?!」
「えっ?あっ、はい?」
「相葉くんだっ!!」
「はい。お久しぶりです。」
二宮が小声で相葉に言った。
「知り合い?」
「うん...。美紀のお姉さんだよ。」
「久しぶりだね。直樹くんも。」
真理子はそう言って微笑んだ。
「あの...とりあえず中に入ってもいいかな?」
真理子は病室の中をちょっと覗き込みながら言った。
「あ、すいません。」
二宮と相葉は慌てて入り口からどいた。
中へ入ると真理子はベッドの脇の丸い椅子に腰掛けて美紀を見て「よく、眠ってる。」
そう言って微笑んだ。
「今日はずいぶんと賑やかだね。美紀良かったね。」
真理子は美紀に話し掛ける。
その様子を高橋は黙って見ていた。
「直樹くん。」
真理子が急に真剣な顔になって高橋を見た。
高橋は急に真剣な顔になった真理子が何を言うのかドキっとした。
「聞いたよ。看護師さんから。」
「えっ?」
「誰かのせいにしないで。美紀は眠ってるだけ。そうでしょ?」
「はい...」
高橋は小さく頷いた。
思えば一番ショックだったのは真理子さんだろう。
すごく仲が良かったんだ。
姉妹と言うより友達と言った感じだった。
眠ってるだけ。
そうだ。
美紀は長い眠りの中にいる。
いつか目を覚ましたら俺を見てなんて言うだろうか?
続く