相葉はまだ少しふらついたが高橋のいる病室まで歩いた。
白石先生が言っていた部屋番号を思い出す。
確か...303
エレベーターに乗りボタンを押す。
その部屋の階まで来るとエレベーターを降りた。
病院着にスリッパという格好がちょっと嫌だった。
やっぱ、着替えれば良かったな。
そんな事を思いながら部屋の前に着いた。
鼓動がもの凄く早く打っていた。
口から心臓が飛び出しそうなほどだった。
相葉はまだ少し怖かった。
高橋に対しての恐怖心でドキドキしていた。
でも、カズもいるはずだ。
相葉は軽くドアをノックした。
コンコンッ
*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*
部屋にいる高橋の頬には涙が伝っていた。
二宮が「辛かったんだね...」と言うと流した涙。
「ごめん。なんで涙なんか...」
高橋は手で涙を乱暴に拭った。
「辛かったんだよ。本当はずっとこうして泣きたかった。そうでしょ?」
高橋は答えなかった。
その時部屋のドアのノックする音が聞こえた。
高橋はもう一度涙を拭って病室のドアを開けた。
「あっ...!」
高橋は思わずそう声を出すと動きが止まった。
相葉の顔をじっと見た。
「...ごめん...ごめん...」
そう言って相葉の前で頭を下げた。
「高橋...」
相葉は病室の奥に二宮が見えないか少し首を伸ばして見たがよく見えない。
そして誰の病室なのかも分からなかった。
「とりあえず、中へ入れてくれる?」
相葉が優しく言うと高橋は一瞬相葉を見つめてこう言った。
「びっくりしないで欲しい。」
「何?」
相葉は不思議そうに高橋を見た。
「とりあえず入って。」
相葉はゆっくりと病室の中へと入った。
ベッドに眠っている女性。
そのベッドの横の椅子に二宮が座っているのが見えた。
「カズくん!」
「まーくんっ!大丈夫なの?!」
二宮は急いで立ち上がって相葉の元へと駆け寄った。
「まーくん、動いてる?大丈夫?」
「ちょっとカズ?動くよ、大丈夫だよ。」と言って少し笑った。
「良かった、本当に良かった。俺もう...まーくんが心配で...」
そう言ってちょっと涙ぐんだ。
「それよりさ、この女の人...」
そう言いながらベッドの女性をじっと見つめた。
それから高橋の方を見て「高橋...もしかして...」と高橋の腕を掴んだ。
「そうだ、そうだよ、相葉。」
「どうして美紀が...?」
「もうずっと眠ったままだ。」
「嘘だ...だって美紀は留学したんじゃ...」
「よく聞け?相葉。」
「何?」
「あの、コンサートの日。あの日から美紀は...」
「えっ?」
「あの日、あの日だよ。忘れたわけじゃないだろう?」
「あの日...?」
「コンサートに誘ったよな?美紀を。」
相葉は思い出していた。
そうだ。
あの日コンサートに誘った。
絶対来て欲しいと、美紀にチケットを渡した。
でもそれは。
高橋と二人で来てくれと誘った。
俺は美紀の気持ちは高橋にあると思っていた。
だから二人で。
と言った。
でも確か来た時は一人だった。
美紀は一人で来たんだ。
それから...?
「思い出した...?」
高橋は相葉を見た。
「美紀はどうしてあの日から?」
「あの日、どうして?どうしてすぐに美紀のメールに気付かなかったんだ?相葉、おまえが...どうして...」
高橋は相葉の胸ぐらを掴んだ。
「俺が...?俺のせいなの?」
「いや、違う。俺も悪いんだ...あの日どうして...どうして...?」
高橋は掴んでいた胸ぐらを離した。
その場に泣きながら座り込んだ。
相葉と二宮はその姿を立ったまま見つめていた。
続く