二宮は相葉の事が気になっていた。
大丈夫だろうか?
他のみんなもどうしているのか気になる。
高橋は病室をウロウロしながら時々美紀のそばにやって来て髪を撫でたりしていた。
「ねぇ、やっぱり教えてよ。まーくんと君と、美紀ちゃんの事。」
「そうだな...もういいかな。話しても。」
そう言って高橋は美紀のベッドの前に椅子を持って来て座った。
二宮と高橋は美紀を挟んで向かい合って座る形になった。
「何から話したらいいのか...。」
「まーくんとは仲が良かったの?」
「まぁ、そうだね。いつも一緒にいたんだ。何をするにも三人一緒だったよ。」
「で、美紀ちゃんは?まーくんが好きだったの?」
「俺はそう思ってた。相葉が学校を休んだり授業中寝ちゃったりして(笑)そんな時はノートをよく貸してたよ。」
「授業中寝てたの?(笑)」
まーくんらしいと言えばまーくんらしい。
二宮はクスっと笑った。
「そう、よく寝てた。」
「そうなんだ。」
「美紀は相葉を心配してたよ。寝ちゃったりして勉強が遅れないかとか。特にアイドルと一緒にいるとか、そんな気持ちはなかったんじゃないかな。学校帰りにファーストフード店にもよく行ったし。楽しかった。三人でいると本当に楽しかった。」
そこまで話すと高橋は少し涙ぐんだ。
そして話しを続けた。
「美紀は...事故で。」
「事故?」
「あぁ...」
そこでまた高橋は言葉を詰まらせた。
「大丈夫...?」
二宮は高橋の顔を覗き込んだ。
「ごめん。コンサートだったんだ。」
「コンサート?誰の?」
「相葉のね。君たちのだよ。」
「俺たち...?」
「そう。あの日...美紀は1人で相葉に会いに行ったんだ。」
そう、あの日。
美紀は1人で出掛けた。
『高橋くんも行こうよ。』
『どこに?』
『相葉くんのコンサート!!』
『へっ?』
あ、そうか!
相葉はアイドルグループだったよな。
いつも一緒にいて、普通に会話してエッチな話しもバカは話しもした。
だから相葉がアイドルなんて事はうっかり忘れている。
そして時々気付くんだ。
あぁそうか!って。
『相葉はアイドルだもんな。』
『そうだよ。見たくない?相葉くんの歌うところ。チケットもね貰ったの。二枚あるの。』
『そっかぁ。どうしようかな。』
『なんで行こうよ!』
美紀は無邪気に笑って俺を誘った。
俺は少し迷っていたんだ。
相葉が誘ったのは美紀だけだと思った。
『相葉は美紀に来て欲しいんだろ?』
『えー、だって二枚もらったよ?』
『女友達と行けばいいだろ?俺には何にも言ってこないし。コンサートの事。』
『なにー?高橋くん、ヤキモチ~!?』
『違うわっ!』
『まだ日があるから考えといてね!』
美紀はそう言って微笑んだ。
でも俺は行く気はなかった。
相葉は美紀だけに来て欲しいと思ってる。
そう思ってたいたんだ。
だから行かなかった。
コンサートできっとカッコイイ自分を、
普段とは違う自分を美紀に見せたいのかなって。
勝手に思っていた。
強引にでも一緒に行こうとした美紀の手を離した。
あの時一緒に行ってれば…
こんな事にはならなかった。
ずっと後悔していた。
自分が一緒に行かなかった事を。
でもそれが、
いつの間にか
相葉が誘って来なければ、こんな風にならなかった。
どうして誘ったんだって。
そんな風に思うようになった。
あの日美紀は
待ってたんだ。
ずっと待ってた。
来ない相葉をずっと。
そして、事件は起きた。
続く