相葉のスマホから高橋へと電話を掛ける。
二宮は少し緊張した。
もうどうなってもいい。
まーくんをこんな目に合わせたヤツだ。
呼び出し音が鳴るがなかなか出なかった。
出ないか...
二宮は一回電話を切った。
どうしようか。
病室の窓辺に立って外を眺めた。
都会の明かりがキラキラと光る。
相葉が静かに眠っている呼吸の音だけが響いた。
呼吸の音と言っても酸素を送る機械の音。
規則正しくその音は響いた。
この病院のどこかに犯人がいる。
きっと、まーくんの来るのを待っているはずだ。
二宮はどうしたらいいのか、考えていた。
すると、相葉のスマホの着信音が静かな病室に響いた。
*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*
高橋は、美紀のいる病室で昔の事を思い出していた。
あの頃の三人。
まだ若かった。
美紀だけの時間があの時のまま止まっている。
目を覚ましたら何を話すだろうか。
その時、高橋の携帯が鳴った。
着信画面を見ると相葉の文字が見えた。
高橋は何故か一瞬戸惑った。
美紀、
本当にいいかな。
ここへ来てもらっても。
最初は本当にここへ来てもらうつもりだった。
でも、相葉を美紀に会わせることはどうなんだろうか?
美紀は?
相葉は?
でも。
でも、やっぱり。
会わせるべきなのかもしれない。
考えているうちに電話は切れてしまった。
高橋は、美紀の手を取り「やっぱり相葉に来てもらうよ。そしたら、目を覚ましてくれる?」そう言って頬を撫でた。
高橋は、美紀の手を布団の中にそっとしまうと椅子から立ち上がって病室を出た。
病院の廊下に出ると携帯を開き相葉への発信ボタンを押した。
しばらくすると「はい」と電話の向こうから声がした。
その声が相葉ではない事はすぐに分かった。
あれ?
誰だ?
「誰?」
「さっき話した者ですけど。」
「あー、相葉の仲間か...どうして相葉が出ないんだ。」
返事はなかった。
「聞いてるのか?おい!」
「いや...聞いてる。」
「こちらに来るつもりは?」
「充分にあるよ。病院のどこに行けばいい?」
「...303号室。明日の朝だ。いいな。相葉も連れて来るんだ。」
「分かった。」
二宮は相葉は連れて行くつもりはなかったが、「分かった」と返事をした。
犯人を怒らせてはいけないと思ったからだ。
高橋は、今日の夜は美紀とゆっくりしようと思った。
病室に戻るとまた椅子に腰掛け美紀の手を握った。
続く