5
潤はチホを後ろから抱きしめたまま言った。
『これからも一緒にいて。』
チホは自分の首に回した潤の腕をギュッと握った。
『私でいいのかな…』
潤はさらにチホをギュッと抱きしめた。
『ケンカしたままだったから、ちゃんと言いたかったんだ。』
潤はチホの座っている椅子の前にひざまづいてチホの手を握った。
『チホ、いつも不安にさせてごめんね。俺はいつでもチホを思ってるから。好きだよ。』
『うん。』
チホは嬉しくて自然と涙がこぼれた。
『もう、泣くなよ。』
潤はチホの涙を拭ってあげた。
『私もうダメかと思ってたから。』
『そんな訳ないないだろ。バカだな。』
『だって、ここ何日も口を聞いてくれなかったし…ヤキモチばっかり焼いて嫌われたかなって。』
『そんな風にヤキモチ焼いてくれるチホが好きなんだ。守ってあげようって思える相手なんだから。』
『私、これからもいっぱい困らせちゃうよ?いいの?』
チホは泣き顔のまま潤を見た。
『あの時出逢ったのは運命だったんだって。俺の一目惚れだったけど、本当に出逢えて良かった。ヤキモチくらいで嫌いにならないよ。』
チホは潤を見て、照れたようにふふっと笑った。
潤はそんなチホを見て頭を撫でた。
『もう泣くなよ。いつだって俺はチホが好きだから。ねっ?』
潤は立ち上がりチホのオデコにキスをした。
二人は見つめ合うと、照れたように笑った。
『行って来るね。』
『行ってらっしゃい。』
潤は玄関で靴を履きながらチホに言った。
『今日もちゃんと待ってて。』
『うん。早く帰れるの?』
『たぶんね。』
『たぶん?』
チホが不満そうに言うと、潤はチホの手に何か握らせた。
『これ。しっかり持ってて。』
『っ!!』
チホがそっと手を開くとネックレスが手の平にあった。
『それ、お揃いだから。』
そう言って潤は自分のしているネックレスを指さした。
『……』
『黙ってるとしちゃうよ?』
『へ?』
潤はチホの頭をグッと自分の方へ引き寄せるとチュッと唇にキスをした。
『キス』
『だって潤、お揃いは嫌だって…』
『そうだっけ?』
『そうだよっ!』
『まぁいいじゃん、お揃い。いつでも一緒みたいで。』
『うんっ』
チホは嬉しくて大きく頷いた。
私はもう不安じゃない。
テレビで見る潤はいつも、あのネックレスをしてる。
もう寂しくないよ。
ヤキモチは焼いちゃうかもしれないけどね。
チホは春の明るい陽射しの中、お揃いのネックレスをつけて歩いていた。
潤、私も大好きだからね。
空には眩しいくらいの太陽がキラキラとしていた。
チホはマンションの階段を上り、『ただいま』とドアを開けた。
『おかえり。』と潤の声が部屋から聞こえて来た。
終わり