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コートのポケットに手を突っ込んでマフラーで鼻まで隠してる。
真っ赤なマフラーの隙間から覗く瞳が寒さからか少し潤んでいた。
「寒い、寒い~。」
「ねぇ、目しか見えてないよ(笑)」
「だって寒いんだもん。」
「イルミネーション見たいって言ったの誰だよ?」
「だってー。」
「だってじゃないでしょ(笑)」
「翔ちゃんと一緒に見たかったんだ。ここのイルミネーション。」
「俺と?」
「うん...」
小さく頷く君は意味ありげに俺を見た。
何か言いたげに俺を見つめている。
俺はその視線に急に恥ずかしくなって視線を逸らした。
「翔ちゃん、今日は迷惑だったかな?」
イルミネーションの光りを見ながら君が聞いてきた。
「ん?」
「急に誘っちゃって。」
「いや。ちょうど暇だったし。」
本当は彼女からの誘いがすごく嬉しかったのにぶっきらぼうにそう答えた。
「良かった。」
それでも彼女は笑顔でそう言った。
俺の隣で寒そうにしている彼女をギュッと抱きしめたい衝動にかられた。
けれど、我慢した。
君が俺を誘ってきた理由は?
好きだから...?
俺は君が好きだよ。
もう、ずっと前から。
続く