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3年前―
『ごめんっ』
背の高い男は居酒屋に入ってくるなり、両手を顔の前に合わせるとチホに謝っていた。
『また遅刻っ!毎回、毎回っ』
『仕事忙しくてね、本当ごめんっ』
『まぁ、いいけど。仕事なら仕方ないしね。』
そんな会話をしながら、チホはその男とお酒を飲みながら食事を始めた。
さっきからこっちをチラチラ見てる男がいる。
なんなの?
その男は帽子を深く被り顔はよく分からなかった。
その帽子の男と飲んでいるもう一人の男。
見た事ある。
そんな事を思っていると、後ろの席の女の子達がざわついた。
《あれ、〇〇だよねー?》
《やっぱりカッコイイね。》
あぁー芸能人か。
ふ〜ん、あの帽子の人も?
チホはチラッと帽子の男を見た。向こうもこっちを見ていたようで目が合った。
もぅさっきからなんなの?
『ごめんチホ、ちょっと電話。』
そう言って背の高い男は席を立ち携帯を耳に当てながら店の入り口まで行ってしまった。
また仕事の電話か。れ
チホは目の前のグラスを口に運ぶ。
その時、帽子の男が近付いてきて、チホの横に座った。
『ちょっと…』
『ねぇ、あれ、彼氏?』
『そうだけど、なに?』
チホは怪訝な顔をした。
『あの人やめた方がいいよ。』
『はっ?いきなりなんなの?』
『俺、昼間見たんだ。女と歩いてる所。』
『そんなわけないっ、昼間は仕事だって!』
チホはまたグラスを口に運んだ。
『それ本当に仕事なの?綺麗な女の人と楽しそうに歩いてたけど。今の電話も女からかもよ?』
ちょうどその時、背の高い男が電話を終え戻って来た。
『なんなら聞いてみたら?』
帽子の男はそう言うと自分の席に戻って行った。
チホは席を立ち、『ちょっとっ』と帽子の男の後を追った。
『さっきからなんなの?そんなデタラメ言って楽しい?!』
『嘘じゃないよ、見たから。ちゃんと確かめた方がいいよ。』
『わかったっ!あんたがデタラメ言ってるって確かめるからっ』
チホは席からこっちを見ている背の高い彼氏に近付いて『さっきの電話、仕事だよね?昼間も仕事でしょ?』と確かめるように聞いた。
『なんだよ、急に?仕事だって言っただろ?なに?知り合い?』
男は帽子の男を見る。
『全然っ知らない人。』
『あの人がなんか、昼間見たんだって。女の人と一緒だったって言うの。』
『へぇ〜』
『昼間、仕事だったんでしょ?』
『あぁ、あんなヤツの言う事信じるの?』
『あの人が嘘言ってるって確かめただけ。』
チホは帽子の男を見る。
すると帽子の男は近付いて来て、
『ねぇ?昼間の綺麗な女の人は誰?俺見たんだ。二股はよくないよ。』
そう言って自分の席へ戻ろうとした。
すると背の高い男は、『さっきからなんなんだよ?!』
『チホ店変えよう。』と店を出ようとした。
『ちょっと…』
チホは慌てて後を追った。
チホは帽子の男をもう一度見た。
よく見ると、テレビで見た事のあるアイドルだった。
続く