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『じゃあ、行ってくるから。』
まだベッドにいる彼女に潤は声をかけた。
『いってらっしゃい。』
ベッドの中から声だけで潤を見送った。
バタンっと玄関のドアが閉まる音が聞こえるとチホはベッドから起き上がった。
『今日も行っちゃったな…』
チホはベッドから下りるとキッチンに行き水を飲んだ。
はぁ…
実は潤とはこの間からケンカ中。
この何日ほとんど口を聞いてない。
私と潤は半同棲状態。
潤はアイドル。
私は普通のOL。
すれ違いばっかりで疲れたよ。
チホはもう一度ベッドへ行くと布団に潜り込んだ。
仕事に行かないとな…
チホはベッドから起き上がると布団から出て服に着替えた。
マンションの玄関を出て鍵をかける。
少し暖かく春らしい陽気の中を駅まで歩いていると、何だか急に寂しくなった。
そもそも潤と私が付き合ってるなんて、不思議な感じだ。
出会いだって…
最悪だった。
チホは駅の改札口を入りホームで電車を待つ間、バッグからスマートフォンを取り出した。
潤へメールをしようかと画面を見る。
―新着メール1件
《この間はごめんな。今日は早く帰れそうなんだ。待っててくれるかな?話したい事もあるんだ。潤》
話したい事…?
チホは画面を閉じるとバッグへスマートフォンをしまった。
潤と私の出会い。
あの時からもう3年になるのか。
チホはホームに着いた電車に乗り込むと深くため息をついた。
続く