18『エピローグ』
「ユウコちゃん、タンポポすき?」
幼い頃の二宮とユウコは、母親たちに連れて来られてタンポポがたくさん咲いている大きな公園に来ていた。
「タンポポ?」
「うん、タンポポ。」
「すきだよ。」
「じゃあ、これあげる。」
カズが小さい手で一生懸命作ったタンポポの指輪だった。
カズがユウコの手を取ってその指輪を薬指にしてあげた。
少し大きなその指輪は、綺麗な花を咲かせていた。
「カワイイ!」ユウコはそう叫ぶと指輪のついている手を太陽にかざした。
太陽にかざしたユウコの手をカズも一緒に見つめた。
「ぼくね、ユウコちゃんの、て、すきだよ。」
「あたしのて?」
「そう。ユウコちゃんのて。」
「そうなんだ。」ユウコは自分の手をじっと見つめた。
「いつか、ほんものの、ユビワ。はめてあげる。」
「ほんもの?」
「うん。だって、ぼくたち、けっこんするんだから。」
ユウコはカズを見て嬉しそうに笑った。
二人は、あの頃と同じ公園のベンチに座ってあの頃と同じように太陽に手をかざした。
「綺麗」
「ふふふ。俺が選んだからね。」
「自信過剰だな」
ユウコは二宮を見て笑った。
「大事にするね。」そう言ってユウコは指輪のついている手を見つめた。
「俺の大好きな手。」
二宮はユウコの手を取って握った。
「手だけ?」ユウコはちょっと不満そうに二宮を見た。
「ふふ、もちろんユウコもね。」
そう言うとユウコの顔を見つめた。
二人が唇を重ねようとした瞬間、ユウコのスマホが鳴った。
「もうっ、マネージャーの斉藤くんだ。行かなくちゃ。」
「なんだ、もうおしまい?」
二宮が不満そうに言う。
「だって、そろそろ時間だし行かなくちゃ。」
「じゃあ、あと5分!」
二宮はそう言うとユウコの唇を塞いだ。
二人の手はしっかりと握られていた。
相変わらずユウコのジャケットのポケットからはマネージャーからの電話が鳴っていた。
「全くあの二人は…」
マネージャーの斉藤は、仕方ないと言うように公園の駐車場から車を走らせた。
「あんまり人が来ない公園だからよしとするか。」そう言って小さく微笑んだ。
少しずつ陽が沈む公園で、二宮とユウコはいつまでも手を繋いでいた。
小さい頃の二人のように。
二人は、見つめあって微笑んだ。
終わり。