16『二人の想い』
無事に撮影が終わり二宮はマネージャーの車に乗り込むと、急いでマンションまで帰るように伝えた。
どうするわけでもない。
ただ、ユウコに会いたかった。
マンションに着くとすぐにユウコの部屋のドアの前まで行った。
二宮はドアの前でしばらく考えていた。
今、ユウコに会って何て言えばいいんだろうか…。
さっき、言った言葉をそのまま言えばいいじゃないか。
二宮の中でもう一人の自分が囁く。
だけど、素直に言えるだろうか?
ユウコに会いたい。
それだけじゃ、ダメなのかな。
しばらく、ドアの前で考えていると、カツカツと足音が聞こえて来た。
二宮が足音の方に顔を向けるとユウコだった。
「カズ!」
ユウコは、二宮を見るとその場で立ち止まった。
二人はほぼ同時に「どうしたの?」と言った。
同時に同じ事を言った事が可笑しくなり「うふふ」とユウコは小さく笑った。
「ユウコ撮影終わったし。もう帰ってるもんだとばっかり。なんで…?」
「うん。これ。寝室の照明の電球切れちゃって。」
そう言ってユウコは買い物袋を二宮に見せるように高く上げた。
「そっか。」
「うん。」
「あのさ…替えようか?」二宮は下を向きながら言った。
「えっ?!でも。」ユウコは一瞬戸惑った。
「おまえ…苦手だろ?」
「うん。」
「替えたら帰るから。」
そう言って二宮はユウコを見てちょっと微笑んだ。
「じゃあ、お願い。」ユウコもまた、微笑んだ。
ユウコは、鞄から鍵を出すとドアをあけて二宮を中へ入れた。
二宮はユウコの部屋に入ると、寝室に行き照明の電球を替えるように照明を外した。
「カズ?」寝室にいる二宮にユウコは声をかけた。
「ん?」二宮がユウコを見る。
「コーヒー入れたから。」
「ありがと。今、行くから。」
ユウコはソファーに座り二宮が来るのを待った。
しばらくして、二宮が「出来たよ。」と言ってリビングに戻って来た。
「ありがと。」ユウコは二宮の顔を真っ直ぐに見れずに視線を外した。
「コーヒー冷めちゃったかな。入れ直して来るね。」
ユウコはさっきの撮影での二宮の言葉を思い出すと二宮と面と向かって話すのが何だか恥ずかしくなりキッチンへ行こうとソファーから立ち上がった。
「ユウコ、俺…」
二宮はキッチンへ行こうとするユウコの腕を掴んだ。
「カズ?今日ちょっとおかしいよ?」
「そんな事ない。」そう言って二宮はユウコを自分の胸へ抱き寄せた。
「カズ?」
「俺、ずっと、ずっとユウコが好きだったんだ。」
ユウコは二宮の背中に自分の腕を回した。
確かに感じるカズの呼吸。
嘘じゃないよね…?
「カズ、どうして早く言ってくれなかったの?」
「ごめん、怖かったんだ。言っても叶わない気がして。」
「バカだな。カズは。」
二人はきつく抱き締めあった。
「ずっと好きだから。これからも一緒にいて欲しい。」
「うん。」ユウコは二宮の腕の中で小さく頷いた。
ユウコは二宮の方に顔を上げて真っ直ぐに見た。
何だか恥ずかしくてすぐに視線を反らしてしまった。
「どこ見てんの?」
そう言って二宮はユウコの頬を片方の手で包むと自分の方へ向かせた。
「だって、改めて見るとやっぱり恥ずかしい…」
「ふふふ…」
「笑わないでよ。」ユウコはちょっと膨れっ面になって下を向いた。
「こっち見て。」二宮はユウコの頬を今度は両手で包んだ。
「カズ…」
二人は真っ直ぐに見つめあうと唇を重ねた。
軽く、触れあう唇。
「ユウコ、顔赤い。」
「もうっカズっ!」
そう言って怒るユウコの唇を二宮は塞いだ。
徐々に深く激しく唇を重ね合う二人。
お互いを深く強く求め合うように唇を重ねた。
「ベッド行こっか?」
「バカ…////」
「ふふふ…」
ユウコが目を覚ますと隣に二宮が寝ていた。
「夢じゃなかったんだ。」
ユウコは二宮の寝顔をじっと見つめた。
隣には好きな人が眠っている。
ユウコは、二宮の顔にそっと触れた。
「ん…?」
二宮がうっすらと目を開いた。
「ごめん、起こしちゃった?」
「ううん。」
そう言って二宮はユウコの髪を撫でた。
「俺…1つだけ覚えてるよ。」
「えっ、なに?」
二宮は小さい頃にユウコと遊んだ、タンポポの公園を思い出していた。
続く