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きっと今度こそは、タケルを幸せにしてくれるに違いない。
そう思った。
しばらくあけみをつけてみて彼女が心から優しい人間だと言う事は彼女の行動を見ていてわかった。
今までの女とは明らかに違う。
えりは、あけみと話したいと思った。
あけみは、潤との待ち合わせ前に職場である本屋に行き、雑誌や本を見ていた。
すると「あけみ」と声を掛けられた。
見ていた雑誌から目を離して横を向くとともこが立っていた。
「ともこっ」
「ちょうど良かった。話しがあるの。」
「何?」
あけみは不思議そうにともこを見た。
「うん。ちょっといい?事務所まで。」そう言って事務所の方を見る。
「どうしたの?」
あけみは黙って歩く ともこのあとについて事務所まで歩いた。
事務所に着くとともこは、店長から聞いたことを全部話した。
「それって、この前の子かな。」
「会ったことあるの?」
「うん。ちょっと見かけたの。妹だって言ってた。」
「そっか。あけみ、気を付けてよ。」
「大丈夫だよ。ともこ。」
あけみは少し不安になったが笑顔でともこを見た。
「あけみ、今日は?」
「あぁ、今日ね、潤くんに会うの。」
「この前言ってたTシャツ?」
「うん。Tシャツを返す用事で会うんだけど。会ってちゃんと話す。私やっぱり潤くんがいないとダメだ。わがままだよね。自分から出て行ったくせに。」
「そんな事ない。あけみ、潤くん離しちゃダメだよ。」
「ふふ、うん。ありがとう。ともこ。」
ともこはあけみが本屋から出ていくのを見送った。
あけみは、時間がまだあるので街を少し歩く事にした。
えりは、どうやって声を掛けようかとあけみの後をつけながら声を掛けるタイミングをみていた。
どうしよう。
なんて声を掛けよう。
えりはドキドキしながらそのタイミングを待った。
あけみが雑貨屋の前で足を止めた。
その時えりは、それとなくあけみに近付いて「あの・・・」と声を掛けた。