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あけみは駅まで行き電車に乗った。
待ち合わせはいつも一緒に行っていたカフェにしていた。
その前に本屋に寄ることにして仕事場に向った。
親友のともこに少し会って気持ちを落ち着かせたかった。
えりはあけみのあとをつけながら思っていた。
あの人ならタケルを大事にしてくれるかもしれない。
高校の頃の彼女もその後の彼女もタケルを裏切る女ばかりだった。
二年前もそうだった。
『タケル、新しい彼女とはどうなの?』
『また、おまえかよ。俺の前に現れるなって言ってるだろ?』
『いいじゃない?』
タケルとは高校卒業して以来会っていなかった。
何年かぶりに私はタケルに会いに行った。
居場所はタケルの両親から聞いた。
『あの事件のこと本当に謝りたくて。』
『もう、いいよ。。』
『ごめんなさい。』
『もういいって。』
『彼女は?出来た?』
『あぁ、もういいだろ。』
タケルは冷たかった。
何度会いに行っても追い払われるだけだった。
ある時、新しい彼女の事を知った。
新しい彼女と歩いているタケルを何度も見た。
だから彼女の顔もよく知っていた。
見間違えるはずはなかった。
その彼女が他の男と歩いていた。
私はその女に近付いた。
『タケルがいるのに、他の男と何してるの?』
私はその女の腕を掴んだ。
『はっ?誰?』彼女が私を睨みつけた。
『私は、タケルの妹だよ!』
『妹?なんで妹が?なんなの?!』
『はっ?あんたこそなにしてんの!?』
『関係ない。タケルとはそのうち別れるから。』
私はその女が気に入らなかった。
また、タケルを悲しませる女だ。
そう思った私は。。
彼女の頬を殴った。
『痛っ!何するの?!』
『タケルを悲しませないでっ!どうして?!タケルと楽しそうに歩いてたじゃない?』
『タケルはね、優しいよ。』
『じゃあ、どうして・・・?』
『ごめん、私・・・妊娠してるの。』
『えっ?』
『タケルの子じゃない。だから。』
『嘘でしょ?最初からタケルとは・・・?』
『だから、ごめん。タケルとはバイト先が同じだったから・・・楽しくて。ただの遊び仲間。』
『何それ・・・』
『タケルは私の事彼女だと思ってたみたいだけどね。私は最初からそんなつもりはなかった。でも、一緒にいて楽しかったから。』
『何なの、それ?』
『私にはちゃんとした彼がいたの。妊娠がわかったし結婚もするの。だから邪魔しないで。』
『邪魔って。。』
私は許せなかった。
その後、その女は仕事も辞めてタケルの前から姿を消した。
タケルもその職場は続ける事が出来ずに辞めた。