25
次の日あけみが仕事へ行こうとするとタケルもちょうど部屋から出てきた。
「あ、おはよう。」
「あけみさん、おはようございます。」
ニコっと笑うタケルはいつものタケルだった。
昨日の怖い顔をしたタケルとは違った。
「これから仕事なんですよ。あけみさんは?」
「あれ?私も仕事。」
あけみはあれ?と思った。タケルとはシフトが同じにならないようにしていたからだ。
「ん?なんかおかしいですか?」
「ううん。何でもない。タケルくんとシフトが同じになるの久しぶりだなと思って。」
「あー、実は今日交代したんです。夜の出勤だったんですけど代わってくれって言われて。」
「そっか。」
「はい。」
あけみとタケルは並んで歩いた。
誰、あの女?
えりはタケルの所に行こうと朝からタケルのアパートへ向かっていた。
その時遠くからタケルが女と歩いているのが見えた。
まさか彼女?そんなわけないよね・・・。
だってタケルは。。
少しだけ後を付けて歩いた。
駅に入って行ったのでえりも適当に切符を買って同じ電車に乗り込んだ。
二人が降りた駅で気が付いた。
タケル、これから仕事なんだ。
じゃああの人は?
同じ本屋に入って行くのが見えた。
職場が同じって事か。
ふーん、そっか。
隣同士で職場も同じなんだ。
えりは何だか寂しくなった。
タケルはやっぱり私には興味ないのかな。
「タケル、あの子可愛いな。誰?彼女?」
「違うよ。妹。」
「妹?似てないな。」
「そう?親は母似。妹は父親似だからな。」
「へぇー。」
タケルは、私の事をずっと妹だと言っていた。
同じ高校に入ってもそれは変わらなかった。
あの時自分のした事でタケルは傷付き私はさらにタケルから離れてしまった。
一緒に暮らす事が出来なくなった。
でも、あれはあの子だって悪い。
だから私が・・・。
違う。やっぱり。タケルにとっては迷惑な話しだった。
「おまえの妹ヤバイな。タケルの事好きなんじゃない?」
そんな風に言われていた。
でも、タケルは私を学校では責めなかった。
代わりに私と一緒に暮らす事をやめた。
親の反対を押し切って家を出た。