15
パスタ屋からあけみが先に出てあとからタケルが出てきた。
「奢ってもらっちゃって。ご馳走様。」
「誘ったのはこっちなんで。これからどうします?」
「帰ろうかな。」
「そうですね。もう少しあけみさんといたかったけど今日はここまで。」
「ふふ、うん。」
「送ります。」
「えっ?いいよ。一人で帰れる。」
「ダメですよ。女の子。でしょ?危ないし。」
「いつも仕事からだって一人で帰ってるし。大丈夫。」
「今日はちょっと遅くなったし。送ります。」
タケルのちょっと男らしい態度にあけみは少しだけ気持ちが動いた。
「じゃあ、お願いしようかな。」
「はい。」
二人は並んで歩いた。
「あけみさん、今日はちゃんと彼氏さんと仲直りして下さいよ。」
「ふふ、うん。でもまだ帰って来ないの。」
「原因は何なんですか?彼氏さんの浮気とか?」
「まさか。彼はそんな事する人じゃない。私がいけないの。」
あけみはふぅーとため息をついた。
「大丈夫ですよ。素直に謝れば許してもらえます。」
タケルの自信ありげな言葉にあけみは少しだけ気持ちが軽くなった。
「ありがとう。もうここでいいよ。」
歩いているうちにマンションの前に着いた。
タケルが「じゃあ」と手を振って帰ろうとした時、前から歩いて来る潤の姿が見えた。
あけみは一瞬ドキッとした。
タケルと一緒にいたからだ。
「あっ!」
「あけみ!何やってんの?!」
潤はタケルの存在に気付いて「誰っ?!」とタケルを見て言った。
「あの、潤。彼は職場の仲間で・・・」そこまで言いかけた時、「あのサンドイッチの?ふーん。」とタケルを見つめた。
「サンドイッチ?」タケルが不思議そうにあけみの顔を見た。
「あの。。」
あけみが戸惑っていると「彼氏さんですよね?あけみさんとちゃんと仲直りして下さいよ。喧嘩したままだと俺がもらっちゃいますよ?」とタケルは潤に言った。
「ちょっとタケルくん?」
あけみが更に戸惑ってタケルと潤を見ると潤があけみの手を引っ張って自分の方に引き寄せた。
「言われなくても仲直りするよっ!」
「潤?」
「あけみは誰にも渡さない。」
そう言い残してあけみをマンション入口まで引っ張って歩いた。
タケルはちょっと切なそうにあけみの後姿を見ていたが今来た道を引き返し歩き出した。