今日は仕事終わりに二宮くんの家で飲むことになっていた。
私は二人の関係をはっきりさせようと心に決めてきていた。
「今日はさ、映画でも観ようと思って借りてきたんだ。」
二宮くんがテーブルの上のDVDを手に取って私に見せた。
「何借りて来たの?」
「ともこちゃんが観たいって言ってた恋愛もの。」
「覚えてたんだ。私が観たいって言った映画。」
「うん。観る?」
私を横目で見ながら聞いてきた。
「観たい!」
「じゃあ、ちょっとだけ暗くしていい?」
「へっ?」
「あぁ、やだかな?映画観る時暗くしない?」
「えっ?でもいつもはそんな事しないよね?なんで?」
「ん?まぁ、いいじゃん。せっかくだからさ。」
なんだか一瞬何かを企んだような顔をしたような気がした。
「まぁ、いいけど。」
部屋のカーテンを閉めて電気を消すと真っ暗になった。
テレビの画面だけで部屋が少し明るくなった。
映画が始まってビールを飲みながら観ていたけれど何となく居心地が悪かった。
映画の内容のせいかな。
いつもはアクションものやコメディものを観て二人で笑いながら観ていたけれど今日は違った。
映画の中の男女がドキドキするようなセリフを言っている。
ソファーに隣同士で座っているのが辛くなってきた。
その時二宮くんの手が少し触れてドキドキが止まらなくなった。
「あのさ、止めない?」私は耐えられなくなって映画を観るのを止めようと言った。
「えっ?なんでこれからいいところでしょ?」
二宮くんが私を見る茶色い瞳がテレビ画面の光を反射してキラキラして見えた。
「なんかさ、恥ずかしいよ。二人で観るの。」私は二宮くんを見るのが耐えられなくなって視線を逸らした。
「なんで?恥ずかしいの?」
「分かんない。」私は下を向いて首を横に振った。
自分でもよく分からないうちに瞳から涙がこぼれた。
「えっ?」
「ごめん。なんでもない。どうしたんだろ?私(笑)」
「えっ?なんか俺悪い事した?」
「違う。」首を横に振ることしか出来ない。
こんなのやだ。
今日ははっきり自分の気持ちを伝えようと思って来たのに。
自分でも分からないのに涙が勝手にこぼれる。
テレビ画面の男女は静かにキスをしていた。
そのシーンが泣いている私の目にも映った。
こんな映画観たいなんて言わなきゃ良かった。
二宮くんが私の涙を手で拭ってくれる。
「ごめん。俺のせいなら謝るからもう泣かないで。」
こんな風に彼が私に触れるだけでドキドキして心臓が苦しくなるのに二宮くんは平気なんだろうか。
やっぱり苦しい。
こんなに好きになってたなんて。
「ともこちゃん?」
二宮くんがさらに私の顔を覗き込む。
「ごめん。今日はもう帰る。」
私の頬にある二宮くんの手をそっとどかして私が立ち上がると腕を掴まれてまたソファーに座らせられた。
「帰らないでよ。」
二宮くんの瞳は相変らずテレビ画面の光に反射してキラキラしていた。