3
その日からカズは潤くんの話しはしなくなった。
潤くんは相変わらず、私に電話を掛けてくる。
2人で会う事もたまにあった。私だって、いけないと分かっていた。
でも、潤くんはずっと友達だったし、私には女友達と会う感覚とさほど変わらなかった。
でも、潤くんにはやっぱり、私は友達以上として想われていたみたいだった。
そんな時に、カズに言われたあの言葉。
『本当はどっちが好きなの?』
カズが好きに決まってる。
私は寂しげにベッドから「バイバイ」と言ったカズを思い出していた。
カズは勘がいいから、何かに気付いているんだろう…
あの日からしばらく忙しくて会っていない。
時々入ってくる彼からのメール。
《本当に俺の事好き?》
私は《好きだよ》と答える事しか出来ない。
もう、何週間も会わない日が続いたある時、夜中にカズから珍しく着信があった。
―もしもし?
―元気?何してた?
―カズ、どうしたの?
―忙しいの?最近、本当におまえに会ってないでしょ?
―ごめんね、仕事、忙しいんだ。
―ねぇ、潤くんとは会ってんの?
―会ってないよ…どうしてそんな事聞くの?
―別に…おまえ浮気してない?
―えっ?何言ってるのっ?するわけない。私はカズが大好きなんだよ?
―ふ~ん…ってかさ、俺見たよ。潤くんと2人で、カフェでお茶してるところ…あの日、俺休みで、おまえのところ行こうかなって…楽しそうだった…
―潤くんは友達だよ?私にとったら、女友達と同じ感覚なの。
―俺に内緒で会ってんだ?
―違うっ
―ふ~ん…俺寂しいよ…
あの日だって、おまえ潤くんと同じ匂いした…
なんで…?
カズが何となく泣いてるように感じた。
―カズ…?
―俺さ、寂しくて死んじゃうよ…?
ちゃんと俺だけ見てよ…
―カズ、今から行くから、ちゃんと家にいて。
思い出した。カズはものすごくヤキモチ妬きだって。
私は急いで支度をして家を出ようとした。
その時、チャイムが鳴った。
まさか、カズ?
私が急いで玄関を開けると潤くんだった。
「潤くん!?」
「ごめん、夜中に。やっぱりさ、どうしても会いたくなって。」と話す潤くんからはお酒の匂いがした。
「ちょっと、潤くん酔ってるの?」
「ちょっと…飲んでて…」
と言った瞬間、潤くんが私の方へ倒れ込んだ。
「痛っ…、重い…潤くんっ?」
「俺、好きなんだよ、どーしてもっ!」
私の上に倒れ込んだまま、潤くんは私に言った。
「潤くんごめん!私カズのとこに行かなくちゃいけないのっ!」
「ダメっ!行かないでよっ」
「潤くん…でもね、カズも死んじゃうって…」
「死ぬわけないじゃんっ、あいつそんな事言うんだ?」
「カズはね、寂しいと死んじゃうのっ!」
「バカじゃないの?もういいじゃんっ、俺のとこに来なよ。」
「潤くんっ!重いよ、離れてっ」
「なんでだよ?なんで、あいつなの?」
「わかんない、わかんないけど、私はカズが好きなのっ潤くんじゃダメなのっ」
「そっか…ごめん…」潤くんはそう言って、立ち上がった。
「そんなに、あいつが好きなんだ?」
潤くんはその場に座り込んでしまった。
「…潤くん?大丈夫?」
「………」
「えっ?寝てる?」
「ちょっと…おーいっ」つついてみたけど、潤くんは座ったまま眠っていた。
結局…
カズのところには行く事が出来なかった。
続く