16
朝になっても幸せな気持ちは覚めることはなかった。
彼が私に向けて微笑むと私も自然と笑顔になった。
軽く瞼と唇にキスすると彼はベッドから起き上がって寝室から出て行った。
私も散らばった服と下着を拾い集めて身に付けるとリビングへと行った。
『おはよう。コーヒー飲む?』
いつもと変わらない笑顔で彼が聞く。
夜の顔とはまた違って、爽やかな彼がそこにいた。
『ふふふ、どうしたの?』智くんはわたしを見てふにゃと笑う。
『なんでもない。智くん私、ここにずっといてもいいかな?』
『もちろん。』彼は当たり前だろ、と言うふうに頷いた。
『トモちゃん、今日、仕事でしょ?時間は?』
『まだ1時間あるから。』
『良かった。』
二人で軽い朝食を食べたあと、私が支度して出掛ける時『トモちゃん、これさ聞いて欲しいんだ。』と彼が私にiPodとイヤホンを渡してきた。
この5曲目ね。そう言ってあとで聴くように言われた。
『ん?これ聴けばいいの?』
『うん。まぁ、あとで聴いてみてよ。』
彼は何だか恥ずかしそうに笑った。
『じゃあ、行ってきます。』
『行ってらっしゃい。』
彼の手が私の腕をつかんでそっと引っ張る。
軽く唇が触れるだけのキス。
私は手を振りながら玄関を出た。