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智くんが行ってから会社に電話をして、掃除をした。
それから、私は一旦家に帰って小さめのカバンに着替えと化粧品、必要なものを詰めてアパートを出た。
帰りに買い物をしてマンションに戻った。
合鍵でドアを開けるとき何だかドキドキした。人の家に勝手に入るみたいだな。
何だか慣れない。
私は冷蔵庫に買ってきたものをしまうとソファーに座った。
疲れた。智くん、何時に帰って来るかな。
テレビを付けてソファーに横になった。旦那さんを待ってる奥さんて、こんな感じ?
とか考えながら顔がニヤける。
時計を見るともう3時だった。
1日が早く感じる。そう言えばお昼食べてないな。
お腹空いたかも。
少し早いけど夕飯の支度しようかな。
ソファーから立ち上がったと同時にiPhoneが鳴った。
智くんからのメールだった。
《ごめん、今日帰れないかも。ロケが長引いちゃってまだ帰れそうにない。ご飯先に食べてていいよ。》
なんだ残念。
考えてみれば、仕事が不規則な彼だもん。仕方ないよね。これからもこんな事しょっちゅうだろうし…。
慣れないとね。
自分に言い聞かせる。
朝の幸せな時間を思い出すと寂しかった。
それでも、ご飯だけは作ろうとキッチンへと向かった。
冷蔵庫から材料を出して支度を始めた。
全部出来ると一人分をお皿に盛り付けてラップをして冷蔵庫にしまった。
残りをリビングのテーブルまで運ぶと一人でご飯を食べた。
つまんないな。
一人でご飯を食べる事がこんなにつまらない事だと思った事はなかった。
いつも、一人でご飯を食べても“つまらない”
なんて思ったりしなかった。智くんと出会ってから自分が少し変わったような気がした。
私、こんなに寂しがりだったかな。
広い部屋で一人、彼を待っているのが何だか寂しい。
何時に帰って来るかな。
お皿を片付けてテレビを見ていても彼が帰って来る様子はなかった。
もう寝ようかな。
シャワーを浴びて髪を乾かしてベッドに入った。
どのくらい経ったのか、夢なのか、現実なのか、智くんが私を呼ぶ声がした。
『トモちゃん。』
『ん…?』
私はうっすらと目を開けた。
智くん?
夢かな。
『寝てたのにごめん。』
『さと…し?』
『ごめんね。寝てたよね。ご飯作ってくれたんだね。冷蔵庫 見たよ。』
私は眠っていた体を彼の方へ向けた。
『冷蔵庫、見たの?』
『うん。見た。』
智くんは、ベッドの脇で膝まづいて私の顔を覗き込んでいた。
少しずつ目が覚めてきて、私はベッドの上に体を起こした。
『今日はごめんね。帰り遅くなって。』
智くんはベッドの脇に座って私を自分の方へ引き寄せた。
ギュッと彼が私を抱きしめる。
その温もりにホッとしたのか涙が出てきた。
『智くん。今日、寂しかったよ。。』
思わずそんな言葉が口をついて出てきた。
智くんは何も言わずに私をさらにギュッと抱きしめた。