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しばらく抱き合っていたけれど、智くんが、私を自分の体からそっと離して私の顔を見つめた。
私はものすごい緊張してドキドキが止まらなかった。
『トモちゃん?』
『何?』
智くんが私を見て、ふふっと笑った。
ん?私は不思議そうに智くんの顔を見た。
『トモちゃん、マスカラ?落ちてる。』
『へ?やだ、どうしよう。』
私はさらにドキドキして顔が真っ赤になるのがわかった。
『いいよ。どうせ落ちるし。。』
『えっ?』私が智くんをもう一度見ると智くんの顔が私の顔に近付いてきた。
『へ?』
私の瞼に智くんの唇が触れた。
もう一度、反対の瞼にも唇が触れた。
そして私の唇と彼の唇が軽く重なった。
『ふふ』智くんはちょっと照れたように笑った。
『走って来たの?』
智くんが私を見て聞いた。
その言葉を聞いて、私は一瞬でいろんな事を思い出した。
泣いたり走ったりよく考えたら酷い顔と汗。
やだ、どうしよう。今頃になって急に恥ずかしくなってきた。
『あっ、ごめん。やだ私どうしよう。酷い顔だよね。』
『いいよ。一生懸命走って来てくれたんだよね。』智くんは、そう言って優しく笑うと『シャワー浴びる?』とドキッとするような事を言ってきた。
『えっと…』私がとまどっていると、『いいよ。汗もかいたし気持ち悪いでしょ?シャワー浴びてきて。』そう言って立ち上がるとリビングの隣にある寝室へと入っていって戻って来た。
『はい、これ着替え。』
智くんは私にTシャツとスウェットのパンツを渡した。
『えっ?いいの?』
『いいよ、下着はないけど(笑)』そう言って、笑う。
もう、智くん、さっきからドキドキさせすぎだよ。
私は着替えを受け取ると浴室へと向かった。
シャワーを浴びてタオルで体を拭いて着替えるとなんだか恥ずかしくなった。
智くんの匂いがする。
Tシャツからほんのりいい香りがした。
やっぱり大きいな。Tシャツとスウェット。
リビングに戻ると智くんがソファーに座ってテレビを見ていた。
私に気付くとテレビを消した。
『トモちゃん。ちょっと大きかった?でも可愛いよ。』
『大丈夫?なんか恥ずかしいね。』
『うん。恥ずかしいな、なんか。』
智くんはそう言いながら私に近付いて来てちょっと恥ずかしそうに私を抱きしめた。
『今日、泊まってって。』
『うん。』私は智くんの耳元で頷いた。