※この作品は実在の人名が登場

 しますがあくまでも個人の妄想

 で、完全フィクションです❕

 またBL(ボーイズラブ)要素を含み

 ますのでご理解頂ける方のみ

 お読み下さい❕❕🙏❌

 ご理解頂けない方、

 BLの意味が判らない方はこの

 ままお戻り下さい🙇💦💦

また、こちらに初めていらした方は最初にこの

ページをお読み頂き、納得されたうえで『自己

責任』で読み進めてください🙅 



心が病んでしまうほどの、悔恨しかない事件を
経験した三郎にとって。
家族には避けられ、義務的な会話しかする事も
なく。
他者と接する事を極力避けてきた三郎にとっ
て。
この風磨、という初対面の青年と過ごした時間
は本当に久しぶりに『他者との関わり』の『安
寧』を感じられる一時となった。
初めて会ったはずの青年。
二度と会う事のないだろう青年。
風磨と名乗る彼の雰囲気のせいもあるのだろう
が。
けれど、だから、きっと気楽なのかもしれない、
三郎はそう思った。

病院の敷地手前で足を止め
「流石にここから迷う奴はいないだろう。」
肩を挙げておどけてみせる三郎に
「フフ、ですよね。本当にありがとうございま
  した。色々と助かりました。」
風磨も楽しそうに笑いながらペコリと頭を下げ
て礼を伝える。
「いや、こっちこそ、カフェオレ、サンキュー
  な。」
上目遣いに風磨を見上げ、随分とこどもっぽい
笑顔で、無防備に返す三郎に。
風磨はキュッと唇を噛み締めて、一瞬複雑そう
な表情で眉根を寄せた。
その後、真剣な眼差しで三郎を見つめる。

と、ギュウッとその体を抱き締め、そのあと、
フワリ、と自身の唇を三郎のソレに重ねた。

「っ!!〇×△■※~ッッ!??お、おま、ぃ、い、今、
  何、し……ッッ!!!」
あまりにも想定外過ぎる風磨の意味不明行動に
三郎は言語にならない悲鳴を発し、自身の口元
を両手で抑え、真っ赤になって風磨に怒鳴りつ
ける。
「何って……今日、暴漢から助けてくださった御
  礼と、道案内をしてくださった御礼を兼ねての
  ハグとキス、ですけど……駄目でしたか??」
と、まったく動じる事なく首を傾げる風磨に
「に、日本にそんな文化は、ないわぁっっ!!」
三郎は真っ赤な顔のまま叫んだ。
「そうなんですか!?なら次からは三郎さんにだけ
  しますね。」
ニコリ、と悪びれる事ない風磨に
「俺にもしなくてイイわ!!」
それ以上に二度と会う事もないだろぅ!?と、続
けようとした言葉を、何故か三郎は飲み込んだ。

何故なのか。

三郎には、この“風磨”との縁が、ここで終わる
気がしなかったから。

それはただの希望めいた都合良い願望なのか、
虫の知らせなのか、刑事の直感なのか、第六感
的なものなのか……。
「兎に角!!ここは日本なんだ!!変な文化を持ち込
  んで、また妙な奴らに絡まれても、運良くまた
  俺が通りかかるとは限らないんだからな!?」
どこか無防備な危うさを抱える風磨に、三郎は
真剣に言い聞かせていた。
「ハイ、分かりました。」
風磨はクスクスと笑いながら
「じゃあ、また、何時か。三郎さん。」
ペコリ、とお辞儀をするとヒラヒラと手を振り、
振り返る事なくその長身が病院内に消えていっ
た。
「あぁ、また何時か、な。」
三郎も軽く手を挙げ、風磨の姿が消えるまでそ
の背中を見送った。
全く……今日は色々と“とんだ一日”になった気が
する。
普段の二倍疲れた。
普段の三倍、新鮮な日でもあったが。
「さて、と。」
本来ならこの病院にあまり長居はしたくない、
それが建物の外であれ。
両手を上着のポケットに突っ込むと、背中を丸
めて三郎は足早にその場を去った。

「……遅くなりました……。」
病院の屋上、風磨は立っている数名の人影に声
をかける。
「いや、俺こそ悪かったな。手加減出来なくて
  ……怪我、なかったか!?」
「大丈夫です。それにあれくらいリアリティが
  なければ武蔵三郎は騙せません。」
「だな。」
風磨を含む数名の人影が遠くなる三郎の姿を目
で追う。
「……本当に決行するんだよな。」
「でなければ皆を集めた意味も、今日、武蔵三
  郎に接触した意味もないでしょう……。」
「イイの!?アンタ、武蔵三郎に情が移ったとか
  じゃないわよね。」
「安心してください。僕の憎しみが消える事は
  ありません。それに……“僕個人の感情”で、こ
  の計画に支障をきたす事はありません。」
「後悔しないのか」
「あの子を失って以来、僕の人生は後悔だらけ
  なので……今更です。」
仲間から無言で手渡されたソレ。
赤い目をした、青い鬼の面。
「そう、僕たちはまた出会う運命なんですよ、
  三郎さん……いえ、武蔵刑事ぃ。」
渡された面を被った青年はそれを被り、肩を揺
らして愉快そうに笑った。

灰色の壁、灰色の服、狭い部屋、自由のない空
間、監視された世界……
あれだけ大切にしていた、復讐の鬼と化す事を
大和に決めさせた家族との想い出は既に優しい
セピア色となって時々大和の心を和ませたけれ
ど。
今の大和の頭を、心を色鮮やかに占めるのは
『武蔵三郎とやり取りした時間』ばかりで。
大和の全ては『武蔵三郎』に囚われていた。

“憎しみ”と“恋情”は紙一重、だと誰かが言った。
これは……憎しみなのか!?……それとも……

大和にとっての“武蔵三郎”とは、まさにそうい
う存在だった。
一日中、彼の事だけを考え、彼の一挙手一動を
想像し、実際対峙した時に彼がどんな表情をど
んな反応をするのかをずっと夢見ていた。

残念ながら彼は自分が菊池風磨だという事に気
付く事がなかったが。
もし、自分があの時の風磨だと伝えたら、彼は
どんな反応を示すのか、想像するだけで愉快で。

彼にあれだけ「愛している」という“言葉”を強
要したのも、別に彼の気持ちも確かめたかった
訳ではなく。
今なら分かる、単に自分が聞きたかっただけだ
ったのだ、彼の声で、彼の言葉で。
彼からの「愛している」を。

大和は自分の唇を長い指でなぞる。
三郎の唇に触れたソレ。

想像すれば、また自然と笑いが込み上げてく
る。

武蔵刑事、あなたは今、何をしているんでしょ
うね。
また埃まみれ、傷だらけで突っ走っているん
でしょうか。
そろそろ「獣」が動き出す頃かもしれませんね。
面会などあろうハズもなく。
仲間なぞ尚出来るハズもない灰色の檻の中。
自分の記憶の中の三郎とひたすら会話し続ける
大和に。

「大和、面会だ。」
抑揚のない声で義務的に告げられ、大和の瞳が
光を取り戻す。
クックッと込み上げる笑みを堪え切れない。

ようやく、ようやくだ。
念願叶って“あなた”が逢いにきてくれた。

待ち焦がれた“彼”と本当に久々に対面した大和
は、相変わらず傷だらけで、ボロボロで、怒り
を滲ませ、必死に事件を解決しようと一生懸命
で、仄かな苛立ちと真っ直ぐな正義感を瞳に宿
した、一年前の武蔵三郎そのままで。
あまりにも変わらない姿に、また大和の口角が
上がる。
その視線は今、自分一人に注がれ。
自分の記憶に頼ろうとしている。
優越感が大和の背筋をゾクリと走りぬけた。
『武蔵三郎の心』から『自分という存在』は
一生消える事はない。
今は「新空港」の事件で手一杯だろうが、ま
た落ち着いた時、武蔵三郎が考えるのは新空
港の獣達の事ではなく、大病院を占拠した自
分の事。
だから敢えて「獣」に関するヒントを与えた、
早くこの事件を解決して、また彼の心に自分
が蘇るように。

求めた答えを得られずに、怒りも露に走り去
った三郎の背中が、また大和の胸を高揚させ
た。

残念ながら自分は模範囚だ。
きっと刑期よりかなり早く外に出られる。
その時は……迷う事なく、真っ直ぐに“彼”の元
へ向かおう。
そして、何時か彼が助けた、あの時の“菊池風
磨”が自分だった事を告げよう。
そして、ただ彼の事だけを想い、考え、焦がれ、
その過剰が気持ちが“憎しみ”からなのか“恋情”な
のか分からない事を素直に告げよう。

彼はどんな顔をするのだろう。
「ふざけるな!!」と怒鳴りつけるのか。
「嘘だろぉ!?」と困惑するのか。

「あなたは……僕を生かした“責任”を取らなけれ
  ばならないんですよ……武蔵刑事……。」

大和は楽しそうに呟いた。
【~終~】